コリ梅

165-それをいま言うのはやめてくれ

 

 

総勢5人で立ち食いそばを食べに行った。

日本人は僕ひとりで、残りはみな韓国人だった。

もちろん日本での話で、店の人も日本人だ。

 

天ぷらそばや、たぬきそばなどを食べながら、

僕らはわいわいと韓国語でしゃべっていた。

立ち食いそば店にしては賑やかすぎる客ではあるが、

客は僕らだけだったので、特に迷惑ではなかった。

 

不幸だったのは、会話の内容に問題があったこと。

 

それぞれ日本語がさほど上手ではなく、

ごくごく初歩の段階を学んでいる最中だった。

そんな彼らのひとりが言う。

 

「メプタヌン カライヨッチ タルダヌン モヤ?」

(辛いは「カライ」だったよな、甘いはなんだっけ)

 

どうやらつい最近、味覚表現を学んだらしい。

辛い、甘いに加え、酸っぱい、苦いなどの単語が続く。

 

「クロム チャダヌン モルカーヨ」

(じゃあ、「チャダ」はなーんだ)

 

そこでひとりがなぞなぞ風に問いかけた。

問いかけられたほうは少し悩んだ後……。

 

「シオカライ!」

 

と大声で答えた。

 

「そう、シオカライ!」

「うんうん、シオカライ」

「シオカライシオカライ」

 

大正解に、しばらくシオカライの声が飛び交う。

ちょうどそばを食べ終える頃で、全員が器を持って汁を飲みながら。

 

その瞬間、厨房内にいた店員のコメカミに、

ビキッと赤十字のマークが浮かんだように見えた。

 

 

20061206

 

 

 

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