コリ梅

155-心の痛むマナー

 

 

僕の周りには日本通の韓国人がたくさんいる。

日本の居酒屋で飲んでいても、まるで違和感がない。

日本的な料理を好んで食べるのみならず、

日本式の振る舞いも身に着けているからである。

 

「まあまあ一杯」

 

と熱燗を注いでくれる韓国人がいるかと思えば、

 

「おーっとっとっと」

 

などと言いながら受ける韓国人もいる。

席に座るなり「とりあえずビール!」の一言が出たり、

乾杯のセリフが「お疲れさまでしたー!」だったりもする。

少しでも遅刻しようものなら「駆けつけ3杯」飲まされる。

乾杯するときの音頭を韓国人に任せたら、

 

「今夜はトコトンまで行こう!」

 

と言われて驚く以上に、むしろ力が抜けた。

いったいどこで覚えたのだ、と問い正したくなるほどだ。

 

刺身を食べていてもワサビを醤油に溶いたりはせず、

刺身に少量乗せ、ワサビには触れないように醤油をつけて食べる。

枝豆、そら豆を好み、たこわさびなどを注文する。

酒の質にもこだわって、地酒や焼酎のお湯割りを好む。

 

ある友人などはどんな店でも地酒のリストを眺め、

都道府県の北から、あるいは南から順番に頼んでいく。

北海道の男山あたりから始めて徐々に南下してくるので、

こちらも熊本の美少年などを振り出しに迎え撃つ。

 

「日本の真ん中で会おう!」

 

と威勢よく飲むのだが、

泥酔するだけでこれまで会えた試しがない。

 

そんな日本通たちばかりなので、

日本的な酒席マナーも確実に身につけている。

 

揚げ物の皿が来たらさっとレモンを絞る。

焼き魚の大根おろしにはさっと醤油をかける。

モツ煮込みがきたら七味唐辛子を振る。

そしてそのいずれの場合にも、みんなに一応一声かける。

 

外国人なのによくもここまでと舌を巻くばかりだ。

 

たいていは好ましいマナーばかりなのだが、

少し心に引っかかるのが日本的な過剰マナーの類。

 

焼き鳥は即座に串を外してみんなで食べやすくする。

箸袋を折りたたんで簡易的な箸置きにする。

大皿から料理を取り分ける際は、直箸を避けて逆さ箸で取る。

 

どれも日本人がよくやることではあるが、

外国人がやるほど正式かというと微妙に悩む。

特に逆さ箸などは、韓国の習慣と相反するものであり、

何も韓国人までもが、と思ってしまったりもする。

しかも厳密に言えば逆さ箸はむしろマナー違反の行為だ。

 

だが、日本人が日常的に行う以上、それを咎めるわけにもいかない。

口出しをせずじっと見ているが、なぜか妙に心が痛い。

 

 

20060603

 

 

 

戻る