コリ梅

143-的確な味覚表現

 

 

食べ物に関する文章を書いていて、

特に悩むことのひとつが味覚表現である。

食べたものを言葉で説明するのは難しい。

 

甘い、辛い、酸っぱい、苦い、塩辛い。

 

単純な味の表現だけではやはり限界がある。

どのように甘いか。どのくらい辛いのか。

用いる表現方法によって、伝わる度合いが格段に変わる。

 

有効な手段のひとつに擬態語がある。

 

とろとろ、つるつる、シコシコ、ぴりっ。

 

現象を音のように表現することで、

読者の想像力を刺激し、微妙な感覚を伝えていく。

適当な擬態語を選別、あるいは創作していく苦労はあるが、

上手に使えると読者との距離がかなり縮まる。

 

また別の手段として、既存の味になぞらえる方法がある。

 

リンゴのような香り、生野菜を思わせる瑞々しさ、

バターにも似た舌触り、揚げたてコロッケの食感。

 

馴染み深い例を引き合いに出すことによって、

読者の記憶を想像力の補助輪に仕立てることができる。

共通する味を見極めるのは容易ではないが、

これまた味覚表現において有効な手段となる。

 

ただし、どちらも表現もなかなかに難しく、

満足のいく文章が書けることは稀である。

だからこそピタッとくる表現を見つけたときは、

その場で小躍りしてしまうほどに嬉しい。

 

さて、これらの話をふまえて。

 

僕が今日経験した衝撃的な味覚体験の話をしたい。

何の気なしに入った、ごく普通のラーメン店。

注文したラーメンとチャーハンのセットが変わっていた。

 

それは、まるで牛丼のようなラーメンと、

まるでチキンラーメンのようなチャーハン。

 

米と麺が逆転しているが、これは間違いではない。

本当に牛丼のようなラーメン(むしろ豚丼風)で、

チキンラーメン味のチャーハンだった。

 

僕はこの事実に気付いた瞬間、会心の手ごたえを感じた。

これほどまでにピタッとくる表現を見つけられるのは珍しい。

なので僕は小躍りしながらこの文章を書いている。

 

きっと誰の共感も得られないと思うけど。

 

 

20051129

 

 

 

戻る