コリ梅

139-韓国料理ベースボール

 

 

「すいません、ちょっと知恵を貸して欲しいんですが」

「おや、珍しいね。キミがそんなに改まって」

 

「実は店のほうで野球チームを作ろうかって話がでてるんです」

「ほう。いいじゃない」

 

「ええ。話そのものはいいんですけどね」

「なにか問題でも?」

 

「わたしが監督をやることになっちゃったんですよ」

「ほほう。それは名誉だ」

 

「そんでメンバーを9人選ばなきゃいけない」

「ふんふん」

 

「ところがこれがまた悩みどころでして」

「なるほどねえ」

 

「ひとつ先生の知恵を拝借させて頂こうと思ったんです」

「そりゃ面白い。ぜひ協力させてもらおう」

 

「申し訳ないですねえ」

「えーと、じゃあまずは1番バッターからいこう」

 

「はい。誰にしましょう」

「1番というと、スピードのあるやつがいい」

 

「スピードねえ。誰かいましたっけ」

「チャジャンミョンがいいんじゃないか。出前の速度は天下一品だ」

 

「なーるほど。確かに小回りもききますね。それはいい」

「だろう。チャジャンミョンがランナーに出て、次は2番だ」

 

「送りバントなど渋い小技が必要ですね」

「テンジャンチゲあたりはどうだろう」

 

「あー、確かに渋い。地味だが役割は果しそうです」

「チャジャンミョンが塁に出てテンジャンチゲが送ると」

 

「はいはい。ちょっとメモしますね」

「そしてクリーンナップ。チームの顔だな」

 

「3番は誰でいきましょう」

「ここはやっぱりビビンバでいこう」

 

「ビビンバでいきますか」

「名前も売れているしハートも熱い。混戦にも強いだろう」

 

「普段からしょっちゅう混ざってますからね」

「で、次は4番か」

 

「はい」

「これはカルビだな」

 

「そうっすね。スタミナつくし、馬力もある」

「馬じゃなくて牛だけどな」

 

「いや、そりゃまあ……」

「5番はプデチゲにしよう」

 

「プデチゲですか? ビビンバ、カルビときてプデチゲ……」

「そうだ、いいクリーンナップだろう」

 

「ちょっと知名度が低くないですかね。むしろプルコギとか……」

「何を言う。知名度がないのは当然だ。外国人助っ人なんだからな」

 

「助っ人?」

「そうプデチゲは米軍基地出身の大リーガーだ」

 

「ああ、なるほど。そりゃあいいですね」

「6番は誰にするかな。守備のいいやつがそろそろ必要だろう」

 

「守備ね。そういや今までの面子はどこを守ってるんですか?」

「チャジャンミョンはやっぱり守備範囲の広いセンターだろう」

 

「1番センター、チャジャンミョン」

「テンジャンチゲは渋くセカンドだろうな」

 

「2番セカンド、テンジャンチゲ」

「ビビンバは外野がいいだろう。レフトだ」

 

「3番レフト、ビビンバ」

「カルビはやっぱりサードを守らせたいな」

 

「4番サード、カルビ」

「助っ人のプデチゲはファーストしかない」

 

「5番ファースト、プデチゲ」

「6番ショート、サムパプでどうだ」

 

「サムパプがショートっすか?」

「どんなゴロでもライナーでも包んでしまうんだ」

 

「ははあ、がっちりキャッチ」

「その後の7番が難しいなあ」

 

「ピッチャーとキャッチャーを除くとあとはライトだけです」

「7番ライトか。地味だな」

 

「地味ですね」

「スンデあたりを入れておこうか」

 

「スンデですか?」

「屋台で苦労をしていた時代が長かったんだ」

 

「なるほど。たたき上げの選手ですね」

「うん。年棒は安いがなかなかいい仕事をする」

 

「8番はキャッチャーですか?」

「うむ。ここはサムゲタンを起用しよう」

 

「そのこころは?」

「やつは腹にデータがいっぱい詰まっている」

 

「なるほど。最後にピッチャーはどうしましょう」

「これは簡単だな。冷麺しかない」

 

「冷麺」

「ラーメンと違って縮れてないからな。キレのあるストレートが武器だ」

 

「はあはあ、確かに」

「コシが安定しているのもいいし、なによりクールだ」

 

「完璧ですね」

「うん完璧だ」

 

「これでなんとか野球になりますね」

「後は監督のキミががんばるだけだ」

 

「はい、がんばります」

「しかし、この面子で外国人のキミが監督というのもねえ」

 

「しょうがないですよ」

「ま、バレンタインもヒルマンも優秀な監督だからな」

 

「そうですよ。ピザが監督やったっていいはずです」

「そうだよな」

 

「そうです」

「監督はやっぱりミスターだからな」

 

20050817

 

 

 

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