コリ梅

109-○○してもいいですか

 

 

釜山から大邱に向かうバスの中。

通路を挟んで、隣の席に座っていた女性が声をかけてきた。

 

「’%($#’”(%…てもいいですか?」

 

乳児を胸に抱いた女性。

突然、話しかけられたので、最初のほうが聞き取れなかった。

聞き返してみたが、

 

「’%($#’”(%…てもいいですか?」

 

と、やっぱり聞き取れない。

慶尚道の方言なので、そもそもがわかりにくいようだ。

やむをえないので、正直に、外国人であることを伝える。

すると、女性はいくぶんゆっくりとした口調で、

「赤ん坊がいるんですが、○○してもいいですか?」

と、問いかけてきた。

 

肝心の何をしてもよいかがわからなかったが、

ともかく赤ん坊について、何か許可を求めているようだ。

こういうときは、わかったフリをするに限る。

 

「ええ、大丈夫です」

僕は笑顔で答えた。

 

だが、わかったフリというのは、時に大きな過ちを引き起こす。

次の瞬間、女性はくるっと僕に背を向けた。

 

「あ……」

ここで、やっとピンときた。

 

「赤ん坊がいるんですが、『授乳』してもいいですか?」

 

授乳という単語を聞き取れなかったのである。

聞き取っていれば、気を利かせて座席を移動したのに……。

 

それから大邱に着くまでの間。

僕は首を窓のほうに固定したまま、ずっと寝たフリをしていた。

 

20040807

 

 

 

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