コリ梅

071-長崎人・韓国のちゃんぽんと出会う〜玉砕編〜(執筆者:きな)

 

 

足を踏み入れたときから嫌な予感がした。これは私の求めているものではない。直感で悟った。しかし、もう後には引けない。私は半ば仕方なく、捨て身で立ち向かうことを決めた。

 

はいはい、行ってまいりましたよ、中国料理店。実は前に他の店でもチャレンジしたのですが、そこは牡蠣ちゃんぽんしかなく、季節柄あっさり拒否されてしまい、悲しく炸醤麺をすすったのでした・・・そこで今度の再試行。門構えからしてなんとなーーーく違う空気を感じていましたが、見事的中。よく見かける「本格」を銘打ったなんちゃって中華料理店ではなく、本当に本格的なお店に入ってしまいました。品のいい陶磁の器に注がれたジャスミンティーをそ知らぬ顔でいただきつつ、心の中では「やだいやだい!ポリ容器ごとどかんと出されるうすーい麦茶が飲みたいんだい!!」などと泣き叫んだりしてみるが、それで状況が変わるわけもなく、ずらっとコース料理が並ぶメニューに目は点の状態。何とかちゃんぽんを発見し、注文しました。テーブルに置かれるたくわんと玉ねぎに少し安堵しながら待つこと5分。ついにちゃんぽんとご対面と相成りました。

 

事前に情報を仕入れていたので、真っ赤なスープにはさほど驚かない。しかし、この碗全体からただよう高級感はどうもひっかかる。まぁ能書きは後でいい。スプーンを手にとる。今考えればちゃんぽんをスプーンでいただくのも勿論初めてだ。しかしこの時点で私は韓国生活4ヶ月。なぜか全く気にならなかった。というよりはむしろ、私はこの料理をもはやちゃんぽんととらえてなかったのかもしれない・・・・・・

 

スープをいただく。おお、まろやかだ。外見に反し、辛味はほとんど感じられない。たまに男女の仲にひびを入れてしまうともささやかれる、粗くひいた唐辛子粉も見当たらない。後からほんのりと上品な刺激を感じられるくらいだ。わずかにとろみもあるが、それは長崎の中華街で味わえるラードの強いしつこさではない。かといって、自宅で母が作ってくれるような胡椒の利いたそれでもない。

 

あああ、これはうまい。うまいが、何かが違う。自分を落ち着けようとたくわんをかじり、玉ねぎを口に放り込む。さあ、具だ、麺だ。まず、美しく細工が施されたイカに目が行く。「ゲソが味が出てうまいんだよな」などと偉そうに語っては、鼻で笑われそうである。他は、椎茸、白木耳、フクロダケ、マッシュルームといったきのこ類に、野菜は玉ねぎ、青梗菜、筍。更に海老、ひ、ひぇっ!? これは干し鮑様っ??・・・まぁ一切れでしたけどね・・・

 

うぅむ、長崎ちゃんぽんに欠かせないキャベツやもやし、ヘルシー派の皆さんが眉をひそめそうな激しく色のついたかまぼこなどは一切見当たらない。まぁスープが極彩色で主張しているので必要ないのだろうが。何か、私の中で小さな幻想がうまれようとしていた。それを必死にかき消そうと、ぐっと奥まで箸を突っ込み、麺をすくい上げた。うむ、これは・・・うっすら透明がかって、なんとも上品な麺だ。長崎人が週末ともなればスーパーで3玉百円で買い求めるそれとは明らかに一線を画している。引き寄せられるように口へ運んだ。ずるずるる。んん、滑らかで心地よいコシがある。軽くて後を引く味わいだ。あぁ、いかん。幻想が更に大きくなっていく。ダメだ、ダメだ・・・

 

後はもう止まらなかった。多少の戸惑いを覚えながら、ただただ口へ運び続けた。幻想はひとつの形になりつつあった。結局私はスープまでほとんど完食し、店を出ることになる・・・

 

まずいことになった。完全に店のチョイスを間違えた。最初は「韓国んちゃんぽんはいっちょんうもぅなかねぇ。辛かだけやっか〜」などと言いつつ、髪をかきあげ、斜め45°を向いてハイヒールの踵をならしながら(サンダルだけど)颯爽と店を出てやるはずだったのに。あの庶民を惑わす美しいインテリアと接客、そして何より味にすっかり騙され、「もしかして、これが本当のちゃんぽんなのではないのか・・・?」などという間違った幻想までうみだしてしまった。そうよ私は心の弱い人間。宗教には気をつけまーす。

 

・・・とまぁ、ここまでけっこう絶賛してしまった訳ですが、ちゃんぽんは長崎人にとって家庭料理。野菜をたっぷり入れて、カレーライスのように一品で夕食が足りてしまうお手軽なものなのです。やたら高級な“もどき”に終始おしりが落ち着かなかったのも事実。次はもっとひなびたお店で、下世話かつツッコミ甲斐のあるちゃんぽんが食べたいです。ちなみに新村で価格は5000W。これだから韓国ってスキスキ。

 

2003年09月12日

 

 

 

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