コリ梅

056-サンチュ洗いに究極の選択

 

 

男は台所で洗い物をしていた。

シンクに水をため、洗剤をじゃばじゃばとふりまいて、

一生懸命に洗い物をしているようだった。

 

「精が出るねえ。」

 

と声をかけ、背中越しにのぞきこむと

そこでは予想外の洗い物が行われていた。

 

「さ、サンチュじゃん。それ……。」

「おお、そうだよ。」

「サンチュを洗剤で洗うの?」

「当たり前だろ。」

 

当たり前……なのだろうか。

 

料理教室で若い女性に米を研がせたら、

洗剤を入れて研いだという笑い話がある。

僕はその事例にぶち当たったのかと思った。

 

「生で食べる野菜を洗剤で洗ってどうすんのさ。」

「サンチュには農薬がたっぷりついているんだ。」

「農薬……?」

「そうだ。水洗いでは落ちないくらいの農薬がな。」

 

彼はサンチュをゴシゴシとこすりながら続けた。

 

「農薬を食べたら身体に毒だ。それを洗い落とすための洗剤ももちろん身体にはよくない。だが農薬に比べたらよっぽどマシなんだ。だからサンチュは洗剤で洗わなければいけない。」

 

なるほど、理屈は通っている。

通っているのだが、なんだかしっくりとこない気もする。

 

その後、僕らはそのサンチュでサムギョプサルを食べた。

サムギョプサルはおいしかったが、どうもサンチュには手が伸びなかった。

 

2003年06月10日

 

 

 

戻る