コリ梅

044-玉サイダーとは何ぞや

 

 

「すいませーん。サイダーをひとつ。」

と、僕の耳には聞こえた。

僕は店の冷蔵庫からサイダーを1本取り出し、

栓を抜いてグラスと一緒に持って行く。

 

「おまたせしました。サイダーです。」

僕がサイダーのビンとグラスを差し出すと、

受け取ろうとした客の手が、すっと伸びかけてぴたっと止まった。

「あれ、サイダーじゃないよ。クスルサイダーだって言ったじゃない。」

「は……?」

「クスルサイダーのほうを持って来てよ。」

 

クスルサイダーなどという商品があっただろうか。

見ると僕が手にしていたサイダーは、緑のビンの三ツ矢サイダーだった。

 

僕は店の冷蔵庫をもう1度確かめてみた。

韓国語でクスルとは「玉」の意。

直訳すると「玉サイダー」だ。

玉サイダー、玉サイダー、玉サイダー……。

ぶつぶつとつぶやきながら、上段から下段までを眺めていくと、

果して、玉サイダーなるものがあったではないか。

 

ビンの中に「玉」が入ったサイダー。

そう、ラムネである。

 

「あー、これかあ……。」

 

僕は改めてラムネを持っていった。

今度は客も満足そうに受け取ってくれた。

 

韓国でラムネを見たことはない。

「玉サイダー」という呼び名も、それ以来聞いたことがない。

日本に住む韓国人たちに通用する呼び名なのか、

それともそのとき客が作った造語なのかはわからないが、

少なくとも僕の印象としては強く残った。

 

僕が自作している韓国語食の大辞典を開くと、

今もさりげなく、その単語が収録されている。

 

2003年04月23日

 

 

 

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