コリ梅

042-寿司屋のまかない

 

 

大学生の頃、寿司屋でアルバイトをしていた。

回転寿司ではなく、きちんとしたカウンターの寿司屋。

もちろんアルバイトなので、にぎるほうではなく、

お茶を出したり、洗い物をしたりという仕事だった。

 

寿司屋の仕事というのは独特のものがあり、

好奇心旺盛な大学生としては、なかなか新鮮でよかった。

職人さんたちが使う符丁を覚えたり、魚に関する知識を勉強したり。

また、職人さんの下らない駄洒落に大爆笑してみせるとか、

休憩時間に当たり馬券を換金してくるというのも重要な仕事のひとつだった。

今振り返っても、楽しい職場だったと思う。

 

このアルバイトのなによりの楽しみは、

職人さんがさりげなく出してくれるまかないにあった。

 

閉店時間が近くなり、お客さんの流れが途切れ始めた頃、

「おい、ちょっと裏行って来い」と声がかかる。

2畳ほどの狭いバックヤードに行くと、

トレイに乗せられた海苔巻きが待っているのだ。

 

海苔巻きといっても、お客さんに出すものとは全く違う。

普通、海苔巻きといえば、カッパ、鉄火、納豆などを連想するが、

まかない用では、刺身を切るときに落とした、端っこの部分を使う。

余り物の有効活用はまかないの基本であるが、

元はカンパチ、ヒラメ、ブリといった寿司ネタ用の高級魚である。

端っこといえども味はお客さんに出すものと同じだ。

 

脂ののったブリの海苔巻きは舌がとろけるようだった。

また半分までヒラメで、残り半分がカンパチという、

途中から具がかわるハーフ&ハーフ海苔巻きというのもよかった。

客としては絶対に食べられない海苔巻きである。

 

バックヤードでお茶もなしに、ガツガツ食べた海苔巻き。

あれよりうまい寿司がこの世にあるだろうか。

 

2003年04月17日

 

 

 

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