コリ梅

002-埼京線の葛藤

 

 

埼京線に乗っているときに携帯電話が鳴った。

 

僕は電車の中で電話をするのが大嫌いである。

急を要する場合以外は無視をするし、取っても後でかけなおすと伝えて切る。

 

だが、そのときは状況が違った。

その日、日本にやって来た韓国人からの電話。

会う約束はしていたのだが、場所を決めておらず、

彼からの連絡をずっと待っていたのだった。

 

「はい。」

電車の中なので声を押し殺して出る。

「おー、なんでー。ちぐむ とーちゃっけっそ。おでぃろ かやで?」

 

あっけらかんとした韓国語が左耳に響く。

僕はその日の集合場所である渋谷ハチ公まで来るように伝える。

だが、相手はそのハチ公がどこなのかわからない。

必死になってハチ公の位置を説明する。

 

僕の韓国語だけが埼京線の車内にビンビン響いていた。

 

いたたまれない状況である。

回りの人の注意が僕一点に集中しているのがよくわかる。

電車内での非常識な携帯電話。

しかも日本語ではなく、なんだかよくわからない韓国語。

 

マナーを知らない韓国人だと思われたかもしれない。

僕のせいで韓国人のマナーが疑われたとしたらどうしよう。

 

僕は電話を切った後、すぐさま日本人の友達に電話をした。

もう1度大声でしゃべり始める。今度は流暢な日本語で。

僕は常識のない韓国人じゃないですよ。

ただの常識のない日本の若者ですよという無言のアピール。

 

つくづく僕は小心者だ。

 

 

2002年12月18日

 

 

 

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