唐辛史
第11回‐陰陽五行説‐
まず始めに陰陽五行説とは何か。そこから整理していくとしよう。
陰陽五行説とは陰陽説と五行説というふたつの哲学的な思想が結びついたもので、もともとは古代中国で生まれたものである。宇宙の万物は全て陰と陽に分かれており、相反する性質を持ちながらも単一では存在しえず、お互いがあってこそ存在しうるという考えである。
陰と陽の区別は、万物の中で能動的・昂進的状態であるものを陽、受動的・沈静的状態であるものを陰と大別する。それらが和合・循環することで万物の生成・消滅といった変化が発生すると考えられるのだ。
韓国の国旗、太極旗はまさにこの陰陽説をモチーフに作られたもので、中央の円が宇宙の根元とされる太極を表し、その中で上下に巴型に入り組んだ上半分の赤い部分が陽、下半分の青い部分が陰をそれぞれ表している。四方の黒い卦は、左上が乾、右下が坤、左下が離、右上が坎で、順に天・地・日(あるいは火)・月(あるいは水)を表す。(余談ではあるが、北朝鮮の国旗は1948年の建国時に作られ、左中央の赤い星は共産主義に向かう未来を、中央赤の帯は人民の熱血を、上下の青は国際連帯ないし平和を、白い円と細い白線は光明や清浄を尊ぶ朝鮮民族の特質をそれぞれ表している。)
これに対し五行説とは、自然界や人間社会の諸現象など森羅万象の生成・変化を、木・火・土・金・水という五つの要素で説明するものである。木から火が、火から土が、土から金が、金から水が、水から木が生じたと考え、これを相生といい、また木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に剋つとされ、これを相剋という。この世に存在するもの全てがこの五気に還元され、木・火・土・金・水の五気がこの順序で回りつつ相互に影響しあうという考え方である。
実際に様々なものが五つに分類して考えられており、代表的なところでは、色が木・火・土・金・水の順に青・赤・黄・白・黒と割り当てられる。朝鮮の料理においては特にこの5色というのが重んじられており、宮廷料理や重要な客をもてなす時には必ずこの5色を基本として料理を作る。
代表的な宮廷料理である九節板(八角形の器に八種の具を入れ、中央に配置したチョンピョンと呼ばれる、溶いた小麦粉を薄焼きにしたもので巻いて食べる料理)には白2種、茶2種を縦横に同色が向かい合う形で配置した上で、その間に挟まる位置に青(緑)、赤、黄、黒の食材を配置することになっている。
また朝鮮料理にはコミョンといって、料理の上に装飾用として載せられる食材がある。宮廷料理に限らず、家庭料理や一般の食堂でもコミョンを用いるが、これも正式には5色の食材を配置することが基本とされている。第2代朝鮮王朝宮廷料理技能保有者である黄慧性はコミョンについてこう説明している。「コミョンは五つの色を考えるといいます。五つの色というのは五行説の考えからきています。(中略)五行説の五つの色は自然色で、イワタケが黒、緑はネギとかセリなど、黄色は卵の黄身、白は白ネギもつかうし、卵の白身も。赤い色はトウガラシを糸状にしたものをつかいます。」
迷信や俗信が軽んじられる現代においても、こうした考え方は無意識のうちにあちこちに根付いている。現在、考えなしに行っている我々の行動、習慣などにも現れており、掘り返して調べてみると面白いことがわかるものなのである。
<続く>
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