唐辛史
目次
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第1回‐問題提起‐ |
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第14回 |
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第15回 |
第1回‐問題提起‐
それは何気ない食卓の会話から始まった。
暑い夏の正午過ぎ。素麺を食べていたように記憶している。
なぜ突然唐辛子の話題になったのかは覚えていない。
しかし母が私に尋ね、私は深く考え込んだ。
そしてそこから、私の唐辛子との長い長い対話が始まったのだ。
当時私はどこにでもいる大学2年生だった。
現在私はどこにでもいるとはちょっと言い難い大学7年生である。
某大学で食文化を学んでおり、唐辛子をテーマに卒論を書こうとしている。
この「雑文」は卒論の進行と密接にかかわっていくと思われ、
雑文の「完結」は、私の「卒業」を意味するのであろう。
せっかく与えていただいた表現の場であるから、
私にとっても読者の方のためにも、有意義な場であるようにしたい。
読者の方の知的好奇心を満たしつつ、私の研究も整理されていくというのが理想だ。
がんばって書いていきたいと思う。
前置きが長くなった。
問題提起に移ろう。母が私に投げかけた疑問のことである。
「朝鮮半島に唐辛子はどこから来たのか?」
母の言い分はこうだった。
朝鮮料理は辛く赤い。唐辛子を非常にたくさん使うという印象がある。
だがその周辺諸国には唐辛子をたくさん使う国がない。
なぜ朝鮮料理だけが際立って辛く赤いのか。
考えてみると確かにそうだ。
日本ではせいぜいうどんに七味唐辛子を振るくらい。
ロシア料理が辛いと聞いたことはない。
中国には唐辛子をたくさん使う料理があるが、それは四川のほうでかなり南に位置する。
一方唐辛子をたくさん使う国を連想してみる。
まず朝鮮半島にインド、東南アジア、メキシコ……。
調べたところ西アフリカやハンガリーも唐辛子消費量が多いらしい。
ざっと考えたところではなんの共通点もない。
地域はバラバラ。世界各地に点在して生えていた植物だったのだろうか。
でなければ一体どんな経路で伝わっていったのだろうか。
これはレポートのネタになるかもしれない。
私はそう考えて唐辛子問題を調べ始めた。
ところが、その結果は実に意外なものであった。
唐辛子は歴史を舞台に世界中を駆け巡り、
信じられないほどドラマティックな過去を抱えていたのである。
<続く>