唐辛史

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目次

第1回‐問題提起‐

第6回-問題提起2-

第11回‐陰陽五行説‐

第2回‐胡椒‐

第7回-胡椒代用品説-

第12回‐鬼神と伝染病‐

第3回‐唐辛子発見‐

第8回-塩分節約説-

第13回‐疫病の歴史‐

第4回‐日本伝来‐

第9回-民俗信仰説-

第14回

第5回-朝鮮伝来-

第10回-先行研究批判-

第15回

 

 

第1回‐問題提起‐

 

それは何気ない食卓の会話から始まった。

暑い夏の正午過ぎ。素麺を食べていたように記憶している。

なぜ突然唐辛子の話題になったのかは覚えていない。

しかし母が私に尋ね、私は深く考え込んだ。

そしてそこから、私の唐辛子との長い長い対話が始まったのだ。

 

当時私はどこにでもいる大学2年生だった。

現在私はどこにでもいるとはちょっと言い難い大学7年生である。

某大学で食文化を学んでおり、唐辛子をテーマに卒論を書こうとしている。

この「雑文」は卒論の進行と密接にかかわっていくと思われ、

雑文の「完結」は、私の「卒業」を意味するのであろう。

 

せっかく与えていただいた表現の場であるから、

私にとっても読者の方のためにも、有意義な場であるようにしたい。

読者の方の知的好奇心を満たしつつ、私の研究も整理されていくというのが理想だ。

がんばって書いていきたいと思う。

 

前置きが長くなった。

問題提起に移ろう。母が私に投げかけた疑問のことである。

 

「朝鮮半島に唐辛子はどこから来たのか?」

 

母の言い分はこうだった。

朝鮮料理は辛く赤い。唐辛子を非常にたくさん使うという印象がある。

だがその周辺諸国には唐辛子をたくさん使う国がない。

なぜ朝鮮料理だけが際立って辛く赤いのか。

 

考えてみると確かにそうだ。

日本ではせいぜいうどんに七味唐辛子を振るくらい。

ロシア料理が辛いと聞いたことはない。

中国には唐辛子をたくさん使う料理があるが、それは四川のほうでかなり南に位置する。

 

一方唐辛子をたくさん使う国を連想してみる。

まず朝鮮半島にインド、東南アジア、メキシコ……。

調べたところ西アフリカやハンガリーも唐辛子消費量が多いらしい。

ざっと考えたところではなんの共通点もない。

地域はバラバラ。世界各地に点在して生えていた植物だったのだろうか。

でなければ一体どんな経路で伝わっていったのだろうか。

 

これはレポートのネタになるかもしれない。

私はそう考えて唐辛子問題を調べ始めた。

 

ところが、その結果は実に意外なものであった。

唐辛子は歴史を舞台に世界中を駆け巡り、

信じられないほどドラマティックな過去を抱えていたのである。

 

<続く>

 

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