サメガレイなる日々
010-古いガイドブックを熟読する
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友人から古い『地球の歩き方 韓国』をもらった。 1991年5月に刊行された「'91〜'92版」。 発売から14年が経過しており、すでにガイドブックとしての価値はないが、 ちょっと見方を変えてみると、結構な資料的価値に気付く。 生まれては消えていく流行の断面や、 非常にわかりやすい形での物価の上昇。 じっくりと眺めてみるといろいろな発見がある。 せっかくなのでちょっと読み込んでみるか。 と、軽い気持ちで読み始め、ふと気付いたら、 2時間かけて1冊すべて読みきっていた。 普段だったら最新刊でも1冊読みきることはない。 自分に必要なところだけ読んで、あとは素通りが普通だろう。 ガイドブックは読むためではなく、情報を活用するためにあるからだ。 だが、賞味期限を過ぎたガイドブックは充分に読み物たりえる。 歴史を扱った本や、文化史の本にも似た面白さだ。 あまりにも面白いので、気付いたところをまとめてみた。 |
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『地球の歩き方 韓国 '91〜'92版』ダイヤモンド社刊 |
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まず当時の物価について。 いちばん差がはっきりしそうな交通費から比較してみよう。 「91年当時→現在の値段(上昇率)」で表してみる。 地下鉄……250W→900W(360%UP) タクシー初乗り……700W→1900W(271%UP) 市内バス……150W→900W(600%UP) 座席バス……400W→1500W(375%UP) ざっと見ただけでもかなり上昇している。 市内バスの料金に至っては、14年間で6倍という上昇率だ。 僕が留学していた頃は市内バスも地下鉄も450Wだった。 料金的に見ると中間程度の時期だが、時期的に見ると1999年。 韓国の物価がここ数年で急上昇しているのがよくわかる。 その中でタクシーの値段だけはかなり安かった。 2005年6月から初乗り運賃が1600Wから1900Wになるが、 地下鉄、バスと比べればこの値上げは妥当といえよう。 交通費と同様に飲食費も上昇している。 わかりやすくソウルの有名店の、代表的メニューを比較してみよう。 サムゲタン(土俗村)5000W→12000W(240%UP) 冷麺(南浦麺屋)3000W→6500W(217%UP) ビビンバ(全州中央会館)4000W→9000W(225%UP) カルグクス(明洞餃子)2300W→5500W(239%UP) こちらはだいたい2倍から2.5倍程度の値上げ幅で収まっている。 交通費に比べるとさほどでもない気もするが、 これはそもそもの値段が高かったということだろう。 土俗村のサムゲタンは地下鉄料金の20倍。 現在JR東日本の初乗り運賃が130円なので、 単純に計算すれば2600円くらいの感覚だったことになる。 もちろんこれは韓国人にとっての話であり、 日本人観光客にとってはレートという別の要素が加わる。 実はこのときのレートは「銀行レートでW100は約20円」。 今でこそ1対9〜10程度のレートだが、 当時は1対5くらいが標準だった。 1万円を両替すれば5万ウォンだ。 その感覚で言えばサムゲタン5000Wは約1000円。 現在の料金が12000ウォンなので、日本人の支払う料金としては、 14年前とたいして差がないということになる。 このあたりのレートマジックはなかなか不思議だ。 |
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土俗村のサムゲタン。14年前は5000ウォンだった。 |
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そのほか基本的なことで気付いたことを箇条書きにしてみる。 1、地下鉄が4号線までしかない(5号線から8号線がない) しかも3号線は旧把発から良才まで。 4号線も上渓から舎堂までしか開通していない。 地下鉄の路線図が妙にシンプルで見やすい。 2、韓国旅行にはビザが必要 韓国旅行にビザなしで行けるようになったのは95年から。 91年の段階ではまだビザの取り方などの情報が記載されている。 ただし「日本から韓国本土を訪問せず済州島のみを旅行する場合、ビザ(入国査証)なしで15日間滞在することができる」との例外もあった。 3、模範タクシーがない 模範タクシーが導入されたのは92年から。 そのかわりではないが、88(パルパル)タクシーというのが走っている。 1500cc以上の中型車が該当するが、値段的にも一般タクシーとは大差ない。 4、バスにトークンを使っている まだ交通カードがなかった時代で、回数券のかわりにトークンを使っていた。 50円玉を1まわり小さくしたようなコインで、99年まで使用されていた。 僕も97年に韓国を旅行したときには使ったような記憶がある。 5、ホプ(HOF)が流行の兆し? 読者からの投稿の中にホプ(韓国のビアホール)に関する記述があった。 「最近市内に急増したのが、ドイツ風ビアホールのホフ(HOF)。○○ホフ、××ホフなどの看板がビジネス街や学生街に林立している」 繁華街にホプが林立する風景は、今でこそ珍しくないが、 当時は画期的な新スタイルの店舗だったのだろう。 韓国の飲酒文化が焼酎一辺倒から、徐々に多様化してきたのがこの時期か。 ただ、また別の読者投稿にはこんな記述もある。 「新村のOBホフは夕方から続々学生が集まり、その飲みっぷりのすごさには度肝をぬかれることだろう。ひとり1万cc飲むと無料になるホフもあり、8000ccで全員ダウンしていた集団もあった」 この投稿を見た瞬間、その姿が鮮明に想像できて笑えた。 新しい飲酒文化が生まれても、根底にある姿勢は簡単に変わらない。 非常に韓国らしい姿で、むしろ好感が持てる気がする。 |
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今とは交通事情も飲酒事情もずいぶん違うらしい。 |
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6、さりげなく風俗情報も交えてある 清涼里駅の説明にこんな情報が書き添えてあった。 「マンモス・ホテルの裏手あたりは、『588』とよばれる遊廓地帯になっていて、ソウルでもちょっと有名なところ。『ヨーインスク』の看板が並んでいても、これは『旅人宿』ではなく同じ発音の『女人宿』。宿の内容が違う」 韓国といえばキーセンツアーという時代があったのも確か。 日本人の旅行形態がかわり、また規制により風俗産業も壊滅状態にある。 今のガイドブックにはまず載っていない情報だろう。 7、消えてしまった屋台料理? 屋台で食べられる軽食は流行り廃りが激しい。 見たことも聞いたこともない屋台料理の情報が掲載されていた。 「慶州駅前の花郎路と直角に交わる通りで見つけました。小さな屋台で売っていて、一見今川焼き。中身は、にんじん、ねぎ、ハムなどを、ピザソースでいためたものが入っています。(中略)1コW100」 文章から推測すると、ピザ的な具が入ったケランパン。 ケランパンはIMF危機(97年)以降に生まれた新商品なので、 このピザ風の今川焼きはケランパンにつながる商品だったのかもしれない。 8、春川タッカルビの存在は? 全州のページにはビビンバやコンナムルクッパプの記述がある。 だが同じ有名地方料理である春川タッカルビについては記述がない。 文献資料によれば春川にタッカルビ通りが形成されたのは83年のこと。 91年の本で触れられていないのは、そこまで知名度がなかったのか。 春川のページで紹介されている名物は、近くの湖で取れる川魚料理だけ。 また明洞の風景写真に春川マッククスの看板も確認できる。 9、マツタケ鍋定食とは? 巻頭の綴じ込みページに15の代表的韓国料理が紹介されている。 プルコギ、韓定食、ビビンバなど有名料理がずらりと並んでいるが、 その中にひとつ見慣れない、マツタケ鍋定食というのを発見した。 韓国語名を見ると、ソンイチゲ(マツタケのチゲ)とある。 今のソウルではめったにみかけないが、当時は有名な料理だったのだろうか。 「日本料理とはだいぶイメージが違うけれど、W3500前後の安さ」 ともあり、マツタケ料理が冷麺やビビンバと同価格で食べられたことになる。 そんなに破格の値段でマツタケが食べられるのなら、 その当時に目一杯韓国に行っておけばよかった。 10、ボッタクリの実例報告? 料理の値段を調べていて、おやっと思ったのがこの読者投稿。 「釜山へ行ったらぜひチャガルチ市場へ行ってみてください。(中略)大きな鯛1匹とビールでふたりともおなかいっぱいになり、しめてW42000でした」 この人は充分満足したという雰囲気で書いているが、 42000ウォンといったら日本円に換算しても8400円。 ビビンバの10倍以上という値段はちょっと高すぎないだろうか。 ちなみに今のチャガルチ市場で刺身を食べたとしても、 大体2人で3万ウォンくらいから交渉していくのが普通だ。 14年前の金額であるとすると、明らかにボラれている気がする。 |
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春川のタッカルビ通り(左)とチャガルチ市場(右)。14年前から営業を続けている人も多いはず。 |
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ということで、つらつらと気付いたことを並べてみた。 もっと詳細にじっくりと読み込んでいけば、 さらに多くの情報を仕入れることができることだろう。 また年ごとの比較もぜひ試してみたいところ。 もし家に古いガイドブックがあるようなら、ぜひ僕に譲って欲しい。 ちなみに『地球の歩き方 韓国』が最初の刊行されたのは1986年。 ソウルオリンピックが開催される、さらに2年前。 このときはどんな情報が掲載されていたのだろう。 機会があったら、ぜひとも読んでみたい。 |
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