サメガレイなる日々
007-九州旅行2日目に食べたうまいもの
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九州2日目の朝はうどんから始まった。 博多の天ぷらうどんは少し違うらしい。 そんな情報を得て、うどんを食べに行ったのだ。 だが、その話はここでは書かない。 すでに別のページで書いたので、興味のある人はそこで読んで欲しい。 博多ではどんな天ぷらうどんを食べているのか。 アドレスはコチラ。 よって、話はいきなり昼へと飛ぶ。 どころか昼からさらに、夜へも飛んでしまおう。 昼に食べたちゃんぽんもうまかったが、 それ以上に、夜食べた鶏の水炊きがうまかった。 ちゃんぽんの魅力も語るべきことは多いが、 ここは涙を飲んで、夜の水炊きに焦点を絞るとしよう。 朝、昼をカットしてでも、夜食べた水炊きは多くを語るべき味である。 また、水炊きと同時に食べた、呼子のイカと馬刺しも負けてはいない。 食卓に並んだすべてが、全身鳥肌ものの美味であった。 今回足を運んだ店は、中洲4丁目に位置する真屋。 博多でも有数の鍋料理店として知られ、 店の常連にはプロ野球選手をはじめとした有名人も多い。 案内してくれたのは、前日と同じ友人である。 |
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朝に食べた丸天うどん(左)と昼に食べたちゃんぽん(右) |
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店に到着すると、まず迎えてくれたのは呼子直送のイカだった。 水槽に入って元気よく泳いでいる。いかにも新鮮そうだ。 「むぅ、これをこれから賞味するのか……」 靴を脱ぎながら、横目でじろっと観察する。 イカは華麗なキックを披露しつつ、軽やかに泳いでいた。 席について、まず運ばれてきたのは刺身の盛り合わせ。 この盛り合わせに、なんとタチウオの刺身が含まれていた。 「九州北部ではよく食べるんだよ」 と、友人はこともなげに言うが、 タチウオは僕にとって、念願であり因縁の刺身である。 「ふぬおおおお、タ、タチウオの刺身ぃぃぃぃぃ!」 という、並々ならぬ興奮に包まれていた。 タチウオの刺身といえば、韓国では済州島だけの味覚。 おいそれとは食べることのできない貴重な料理だ。 僕もこれまでタチウオの刺身を食べる機会には恵まれなかった。 済州島から僕だけ用事で釜山に戻った後、同行した友人たちだけで、 タチウオの刺身を賞味したという、惜しいニアミスが1度あったきりだ。 あのときはサンバのステップで地団駄を踏むほど悔しい思いをした。 いつかは済州島でタチウオ。 その思いが博多の地でかなった。 タチウオの刺身は白身の上品な味を残しつつ、 脂もしっかりとろけ出る素晴らしい味であった。 喜びと感動に打ち震えていると、次なる衝撃が襲ってきた。 「はーい、イカのお刺身でーす」 テーブルの中央に、先ほどのイカが運ばれてきたのだ。 しかも、水槽の中で泳いでいた姿そのまま。 足はうねうねと元気に動いており、活けのまま刺身にされている。 足が動くたびに周囲から歓声があがる。 「ささ、食べて食べて」 友人の声にうながされ、透き通った裸体に箸を伸ばす。 心の中でイカに一声かけて、刺身のひと切れを口に放り込んだ。 口の粘膜に吸い付くような心地よいねっとり感。 歯触りはサクッとして、抵抗もなく身が弾けていく。 そして、舌先に広がる味は……。 「むっちゃ、あまーい!」 こんなに甘いイカ食べたことない。 我さきにと争って食べているうちに、 姿造りのイカは、あっというまに足だけになった。 しかも、この足はまた調理場に戻して天ぷらにしてくれるのだ。 ゲソの天ぷらもまた、素晴らしい味だった。 |
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呼子のイカっ! |
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タチウオの刺身、イカの刺身ときて、 次はなんだと待ち構えていると、なんと馬刺しであった。 タチウオ、イカ、馬。 同じ刺身でも、味のベクトルはずいぶん違う。 なかなか凝った趣向で、反射的にヨダレが口元からこぼれ出る。 赤身のしっとりした部分が、いかにもうまそうだ。 いざ突撃、赤身肉に照準を定めた瞬間。 隣の友人が僕を制し、皿の端っこを指さした。 「ん、これは何?」 赤身の肉とは対照的に、真っ白な塊。 刺身同様、一口大に切られてはいるが、見た目は白いチーズのようだ。 あるいはすき焼きのときに使う牛脂のようにも見える。 「なんなのこれ?」 「タテガミ」 タテガミ? なんだそれは。 タテガミって、馬の背中でなびいているアレのことか? 赤身方面に伸びていた箸を、急旋回させてタテガミに着地させる。 「タテガミ……」 恐る恐る口に入れてみると、脂肪そのものの味。 だが、いやらしい味ではなく、さらさら溶けていく爽快感がある。 噛むごとに脂肪が溶け、飲み込む前になくなっていく。 食べるというよりも、溶かして味わう不思議な刺身だ。 なんでもタテガミとは、タテガミの下に位置する脂肪分のこと。 1頭の馬からほとんどとれない貴重な部位だそうだ。 |
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馬刺しとタテガミ。タテガミは口の中でねっとりととろける |
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さて、大盤振る舞いの最後はメインの水炊きである。 骨ごとぶつ切りにした鶏肉を、同じく鶏でとった濃厚スープで煮る。 モツ鍋と並んで博多名物と称される、2大看板鍋のひとつである。 まず大きな鍋が運ばれ、卓上で火にかけられる。 スープには斑点のように、鶏油がキラキラ揺らめいている。 「長時間じっくりと煮込みました!」 スープが誇らしげに語りかけてくるようだ。 鍋の中にはぶつ切りにした鶏肉。 そのほかの具は大皿に盛られて別に運ばれてきた。 春菊、キャベツ、長ネギ、豆腐、エノキダケ、白滝、麩。 縦割りにした竹筒には、つくねにする鶏ひき肉が詰められている。 ピンク色の肉の合間から、白い軟骨が顔をのぞかせていた。 水炊きの調理は、店のお姉さんが担当してくれた。 慣れた手つきで材料を鍋に投入していく。 その材料さばきも見事なものだったが、 合間に交わす友人との会話が博多弁なのもまたいい。 「うーむ、博多はいいなあ」 と、ひとりしみじみと思う。 |
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大迫力で押し寄せる鶏肉の美味さ。 |
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まず取り分けられたのは、おちょこに入ったスープ。 日本酒を飲むようにしてダシの味から楽しむ。 これがまたうまい。 次に骨付きの鶏肉が取り分けられ、これにガブッとかぶりつく。 モモのいちばん肉付きがいいところから、じゅわっとスープがにじみ出る。 これもまたうまい。 スープがうまい。鶏肉がうまい。 春菊もうまい。豆腐もうまい。白滝もうまい。 などとガツガツ食べているうちに、鍋はあっという間に空になった。 「ああ、なくなってしまった……」 と、一瞬でも悲しんだ僕は愚か者である。 鍋料理の真髄は、具を食べ終えた後の雑炊にあり。 ただちにごはんが投入され、たっぷりネギとトロトロ溶き卵。 ごはん茶碗に盛り付け、刻みノリを山盛りにしたら……。 うっひゃあ、これがもう泣けるほどのうまさ。 鶏肉ってこんなにうまいんだなぁ、という味だった。 後は無言で、ひたすらに雑炊を胃に流し込むばかり。 身も心も骨抜きとなり、幸せ気分にどっぷりと浸ったのだった。 |
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