美味なるニッポン!
第9回:直送ワイン仕込みの絶品2色弁当!
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美味なるニッポン!第9回 |
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<直送ワイン仕込みの絶品2色弁当!> 日曜日の午後に突然電話があった。 韓国つながりで出会った友人Hさんである。 「いま家にいる?」 「ええ、今日は家で仕事をしています」 「じゃあ、これからお土産持って行くから」 「は!?」 あまりにも突然な申し出でであった。 話の内容がつかめず、頭グルグルの状態で問い返す。 「な、何ですか、そのお土産って」 「いいからいいから。あ、夕食は食べないようにね」 詳しいことは話したくないらしい。 何か特別なものを手に入れたということだろうか。 「渋滞しているから到着は夕方過ぎになると思う」 時計を見るとまだ1時前である。 いくら渋滞しているとはいえ、時間がかかりすぎだ。 いったいどこから電話をしているというのだ。 「近くまで行ったらまた電話するよ」 と言い残して電話はプツンと切れた。 僕は何がなんだかわからず、その場でしばし呆然とした。 どこだかわからないが何か美味しいものを手に入れたようだ。 そしてそれをわざわざ僕の家まで運んできてくれる。 電話の口調は興奮気味で、何を持って来るかは秘密。 「ともかくすごいものが来るのだろう」 そう結論づけた途端、目の前の仕事が手につかなくなった。 次の電話がかかって来たのは4時過ぎだった。 僕は机の前での仕事を諦め、プルコギ作りに精を出していた。 野菜を刻み、ナシをすりおろし、牛肉を丹念に揉み込んでいた。 気持ちが乱れて集中できないときは身体を動かすほうがいい。 頼まれたレシピ記事の再確認なので、これもまた仕事である。 「ずいぶん渋滞がひどいので到着がかなり遅くなると思う」 Hさんはそう呟き、到着時刻が7時頃になると言った。 1時に出発して7時到着。渋滞とはいえ相当な長距離移動である。 「ま、楽しみに待っててよ」 そう言い残して2度目の電話も切れた。 謎は深まる一方で、僕はプルコギ作りにも集中できなくなった。 どんな美味いものがやってくると言うのだ。 自分の部屋にこもり、悶々としながら次の連絡を待った。 |
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自宅で作ったプルコギ。専用鍋はないのでフライパンで炒めた。 |
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3度目の電話が鳴ったのは6時過ぎであった。 「6時半くらいには着くから最寄駅まで出てきてくれる?」 「行きます行きます」 何を持ってきてくれるのかはわからないが、 せっかくなのでお返しとして自家製のプルコギを持って行くことにした。 下準備の終わったプルコギをタッパーに詰め、厳重にラップで包装する。 袋に入れて大事に抱えて、僕は最寄り駅まで急いだ。 Hさんの乗った車は路肩に停車していた。 僕が近づいて行くと、Hさんはシートから身体を起こし、 助手席に置いてあった包みを手に車から降りてきた。 「やあやあ、悪いね突然」 「いえ、こんなところまで来て頂いて」 「実はね、今日は静岡まで行ってきたんだ」 「静岡!?」 なるほど、最初の電話から時間がかかったわけである。 話を聞くと浜松までわざわざ名物駅弁を食べに行ったとのことだった。 そういえば静岡には共通の友人Yさんもいる。 「こないだYさんと駅弁の話をしなかった?」 「ええ、しましたしました」 「それを今回……」 「持って来てくれたんですか!?」 友人がガサゴソの袋の中を見せてくれる。 中には2つの駅弁と缶詰類などがゴチャゴチャと入っていた。 「浜松の駅弁でワインに漬けたうなぎ弁当」 「ワインに漬けたうなぎ弁当!」 「こっちが白ワインに漬けたうなぎ弁当で」 「白ワイン!」 「こっちが赤ワインに漬けたうなぎ弁当だね」 「赤ワイン!」 興奮しているのでセリフがすべてオウム返しになる。 駅弁を見ると、同じデザインの色違いになっていた。 緑色のパッケージが白ワインに漬けた白焼きのうなぎ弁当。 白色のパッケージは赤ワインに漬けた蒲焼きのうなぎ弁当。 白と赤で調理法を変えているあたりがニクイ。 「後はうなぎの肝の缶詰と、パック入りの肝吸い」 「いやあ、これはすごいうなぎ三昧ですねえ」 「あとYさんオススメのお菓子だって」 「これもうなぎですか?」 「いや、これは関係ないらしい」 電話越しの興奮具合からかなりのものと予想していたが、 その予想をもはるかに超えるものすごいお土産だった。 「Yさんがしっかり食べ比べてレポートするようにだってさ」 Hさんはそう言い残し、練馬方面へと去っていった。 |
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浜松から運ばれてきた品々。自作のプルコギと交換する(右上)。 |
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さて、手元には2種類のうなぎ弁当である。 急いで自宅に戻り、待ちに待った対面の瞬間を迎える。 縦横にかけられたヒモを外し、包み紙をといてフタを開けた。 現れたのはなんとも立派なうなぎ。 豪勢にも1箱に1匹ずつしっかり入っている。 「ぬ、ぬおお、何と贅沢な!」 フタを開けた瞬間の衝撃がすさまじかった。 弁当箱の7割方がうなぎゾーンであり、そのうなぎがまた大きい。 その光景は2畳間に関取2人が横たわったような感じ。 弁当箱いっぱいに肉厚幅広のうなぎが横臥し、 下にあるはずのごはんもまったく見えない。 「ひゃあ、これはまた贅沢な弁当だなぁ……」 と、ここで意地汚く弁当の値段をチェックする。 白ワインに漬けた白焼きも、赤ワインに漬けた蒲焼きも、 どちらも同価格の1200円(税込み)であった。 両方の包みを開いてみると、微妙な違いがあるのに気づいた。 並べてみると、うなぎの色がだいぶ違うのがわかる。 白ワインに漬けたほうは白焼きだけあって上品な色をしている。 焦げ目がついてはいるが、かなり白さを残した感じだ。 対して赤ワインに漬けたほうは蒲焼きなのでこんがりした茶色だ。 タレに漬け込んだ食欲そそる色合いを見せている。 また、うなぎ以外の3割ゾーンが微妙に異なる。 便宜上、白ワインの白焼きうなぎ弁当を「白弁当」と略し、 赤ワインの蒲焼きうなぎ弁当を「赤弁当」と略して説明していこう。 まず目を引くのが白弁当には生ワサビが入っている点。 説明書きによると、安倍川上流でとれた本ワサビとのことで、 これをその場でおろせるよう小さなおろし金もついている。 白焼きにワサビはつきものだが、生ワサビとは恐れ入った。 すりおろす楽しさに加え、生ワサビならではの香りが楽しめるはずだ。 赤弁当のほうにはワサビ漬けが添えられている。 蒲焼きの濃厚な味わいには生ワサビだと少し弱いのかもしれない。 ワサビ漬けの濃厚な味つけで、蒲焼きを引き立てようということだろうか。 蒲焼きとワサビ漬けの組み合わせは初めてだが、これも悪くなさそうだ。 そのほか漬物が、白弁当2種類に対し赤弁当は3種類。 赤弁当のほうにだけ古漬けのたくあんが加えられている。 山椒とタレは両方に同じくついていた。 |
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白ワインに漬け込んだ「白ワイン仕込京風白焼きうなぎ弁当」。 |
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赤ワインに漬け込んだ「ふんわり赤ワイン仕込蒲焼きうなぎ弁当」。 |
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白弁当には生ワサビとおろし金、赤弁当にはワサビ漬けが入る。どちらの弁当も浜松駅と掛川駅で1年を通して販売。白弁当のほうが販売数が少なく希少。 |
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念入りに観察し、写真撮影も終え、いよいよ試食へと移る。 せっかくの頂き物なので、肝吸いと肝の缶詰も一緒に味わうことにした。 うなぎ弁当も食べ比べの任務があるので2ついっぺんに食べる。 全部並べると、なんとも壮観なうなぎフルコース。 これまでの人生、ここまでうなぎを身近に感じた瞬間はない。 ああHさん、Yさんありがとう。うなぎの神様ありがとう。 ピタッと手を合わせ、感謝を込めて「いただきます!」と叫ぶ。 まずは白焼きから何もつけずに味わってみる。 箸を入れると、ムチッとした肉厚感が伝わってきた。 腹のいちばん分厚いところを狙って口へと運ぶ。 「もむもむもむもむ……ん、んまい!」 うなぎの上品な白身感がしっかりと残されている。 脂の感じもほどよく、あっさりとしつつも旨みが濃い。 ごはんにかけられているタレも最小限だが、 あっさり派の人ならこのまま食べてもよさそうだ。 ワインの香りがしないか、鼻を近づけてみたが、 タレのいい香りだけで、ワインらしさは感じられなかった。 続いてすりおろしたワサビをつけて食べてみる。 ワサビが小さいため、香りは期待ほどではなかったが、 うなぎの白焼きとワサビの相性は予想通りにとてもよかった。 白焼きの旨みにピンと1本芯が通った感じである。 タレをかけてみたり、山椒をかけたりしてみたが、 白焼きの味がいいのでワサビだけで味わうほうがよいようだ。 うなぎの味をしっかりと楽しむことができる。 全部食べきってしまう前に、蒲焼きのほうも試してみる。 こちらもやはり赤ワインの香りは感じられない。 食べてみると香ばしさが前面に出た、こってり濃厚な味わいだった。 白焼きはうなぎそのもののうまさを引き出す味つけだったが、 こちらはタレ、ごはんも含めた渾然一体の味わいが持ち味のようだ。 どっしりとした満足感を求めるなら間違いなく蒲焼きである。 添えられたワサビ漬けを、白焼きのワサビと同じく少量つけて食べてみる。 だが、こちらは生ワサビほどの爽やかさはなかった。 蒲焼きを食べつつ、口直しに少量ずつつまむほうがよさそうだ。 |
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ああ、幸せのうなぎフルコース。うなぎは並べてみると色の違いがよくわかる。右下にある小鉢がうなぎの肝の蒲焼き。 |
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白焼きを食べ、蒲焼きを食べ、生ワサビとワサビ漬けを交換してみるなど、 あれこれ試しているうちに、2つの弁当はいつしか空になっていた。 両方を食べ比べてみたが、結論としてはかなり凡庸である。 あっさりとうなぎ本来の旨みを味わうなら白焼き。 うなぎを食べた! という満足感が欲しいなら蒲焼き。 だがどちらかひとつを選べと言われたら、僕は白焼きのほうを取ると思う。 うなぎのうまさと、生ワサビの魅力がわずかに勝っていると感じた。 ただ、これは2つ食べたからこその感想かもしれない。 白焼きだけを食べたら、蒲焼きのこってり感が恋しくなるだろうし、 蒲焼きだけだったら、生ワサビがの感動は諦めなければならない。 正直な感想を言えば、この弁当は2つ食べてこそ互いの真価がわかると思う。 ただそのためには1食に2400円の出費をし、 うなぎ2匹分のカロリーを摂取しなければならない。 量的には充分2つ食べられる程度だが、 このダブルパンチは精神的にもかなりきつい。 いつの日か直接浜松駅を訪れる日が来て、 しかも幸運なことに赤白両方のうなぎ弁当が残っていたとする。 そんな状況で僕は2つ食べる道を選べるだろうか。 おそらく実際にはどちらか1つで我慢するのではないかと思う。 そしてそれは苦渋の選択であり、断腸の思いであるはずだ。 となると今回の食べ比べは大変に貴重な経験である。 この先2度とないかもしれない幸せなうなぎ三昧。 日曜日の幸せな夕食をプレゼントしてくれた、 HさんとYさんに、もう1度心から感謝をしたい。 ピタッと手を合わせ、「ごちそうさまでした!」。 |
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きれいに全部食べました。 |
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<美味なる料理データ> 美味なる料理 :うなぎ弁当 美味なるエリア:浜松市 美味なる種類 :魚料理 美味なる価格帯:1200円(税込) |
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<美味なる料理リンク> 自笑亭(うなぎ弁当の製造会社) |
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