美味なるニッポン!

第6回:名古屋を感じにスガキヤへ行く!

 

美味なるニッポン!第6回

 

<名古屋を感じにスガキヤへ行く!>

どうしたことか周囲が名古屋づいている。

 

愛知万博は開催中だし、名古屋ブームでもある。

書店に行ってみたら名古屋関連本がたっぷり出ていた。

巷が一面名古屋なら、僕の周囲まで名古屋でも仕方ないのかもしれない。

 

僕自身は万博にも名古屋ブームにもさして関心はなかったが、

周囲でめいっぱい自慢されると、それはそれで気になってくる。

先日もこんなことがあった。

 

「名古屋はカレーうどんなんだよ!」

 

名古屋に行ってきた友人が興奮気味に言う。

名古屋はカレーうどん。そんな話は初耳だった。

 

「きしめんか味噌煮込みうどんの間違いじゃないの?」

 

僕がそう聞き返すと、友人はさらに得意げになって言う。

 

「もちろんそれも名物だけど、カレーうどんも立派な名古屋名物なのさ!」

 

どうやら名古屋でたいへんうまいカレーうどんを食べたらしい。

得たりとばかりにカレーうどんの魅力を語り始めた。

 

でもカレーうどんなんて、日本中どこにでもあるのではないだろうか。

 

僕も関心があるので、それなりに名古屋名物は調べていた。

味噌カツ、手羽先、天むす、ひつまぶし、きしめん、味噌煮込みうどん、

どて焼き、ういろう、小倉トースト、あんかけスパゲティ、喫茶マウンテン……。

 

かつて嘉門達夫が、米米クラブの『FANK FUJIYAMA』を替え歌にした、

 

♪えーびふりゃ きしめん 味噌煮込み

♪ういろう 手羽先 うみゃうみゃうみゃ!

 

という歌詞だってチェック済である。

 

だが、僕の記憶の中にカレーうどんは刻まれていない。

本当に名古屋名物なのだろうか……。

 

僕は書店に向かい、名古屋グルメの本を探してみた。

名古屋ブームだけあって、グルメ本もたくさん出ている。

パラパラとめくり始めたところ、

 

はたして!

 

カレーうどんが載っているではないか。

 

「市内のうどん屋ではほぼカレーうどんが食べられる」

「専門店の多さも名古屋ならではの特徴」

「他県のものとはひと味違う見た目と味わい」

 

と、ご当地料理をアピールするフレーズがたくさん。

友人の言うとおり、カレーうどんは立派な名古屋名物なのだった。

 

「し、知らなかった……」

 

僕はがっくりと肩を落として考える。

このままブームに乗り遅れてはいけないのかもしれない。

 

「自分も名古屋の流れに乗るべきか……」

 

そんなことをぼんやり悩んでいたら、

いつの間にか自宅の食卓までもが名古屋に染まっていた。

 

冷蔵庫にはエバラ食品の「名古屋みそかつ」が常備され、

トンカツにも、大根の煮物にもどろっとかかって出てくる。

「手羽唐のたれ」という便利な商品もしっかり購入されており、

こちらも何度となく食卓を賑わせた。

 

見れば台所の戸棚には「オリエンタルカレー」まで準備されている。

 

「最近は名古屋の味が簡単に手に入っていいわねぇ」

 

嬉しそうに母と祖母が名古屋の味に舌鼓を打っている。

食卓が急激に名古屋化した原因はこの2人だ。

 

と、ここで重大な事実に気付く。

 

「あ、この人たち名古屋人じゃん!」

 

厳密に言えば母と祖母は岐阜県関市の出身。

だが、長い間、愛知県日進町(現在は日進市)に住んでおり、

名古屋市と日進町は隣同士なのである。

 

父は銚子の生まれで名古屋とは無関係だが、

息子の僕は、銚子と名古屋のハーフだと言ってもいい。

また記憶にはほとんどないが、2〜3歳頃は日進町に住んでいたこともある。

 

半分名古屋人で、名古屋在住経験あり。

これは名古屋の流れに乗るべきか悩んでいるどころではない。

 

「僕はすでに名古屋人なのだ!」

 

という天啓にも近い発見を得て、

僕は名古屋文化の積極的摂取を始めることにした。

 

まず出かけたのは名古屋人の心のふるさと「スガキヤ」。

昨年12月、関東圏唯一の支店が高田馬場にオープンしたのだ。

 

 

台所のあちこちに名古屋が潜んでいる。

 

さて、スガキヤとはいったい何か。

 

名古屋人にとっては、「何か」と語り始める時点で論外。

常識中の常識、知っていて当たり前という超有名ラーメンチェーンである。

 

ラーメンだけでなく、ソフトクリームなどの甘味類も豊富で、

ちょっとしたオヤツがわりにも立ち寄れるファストフード的存在。

東海地方を中心に、なんと300店舗以上を展開している。

 

スガキヤの魅力は何よりもその値段にある。

 

なんとラーメンが1杯280円。

 

いろいろトッピングを加えても300円台。

甘味類もソフトクリーム140円、クリームぜんざい190円など、

すべての商品が良心的な価格におさまっている。

 

もちろんそれでいて味も秀逸。

名古屋人とスガキヤは切っても切れない関係にある。

 

 

今回のスガキヤツアーに参加したのは5名。

うち1人は18年間名古屋に住んだ生粋の名古屋人である。

その栄誉を称え、本日は「名古屋嬢」の称号を与えることにした。

 

本人は、

 

「名古屋嬢って嬢つけてもらえる年代だったことにびっくり」

 

と語っていたが、今日くらいはいいだろう。

 

僕自身は本場のスガキヤに行ったことがないので、

本場の味を知る人物に同行してもらえるのはありがたい。

少しでも本場と異なる点は、その都度指摘してもらった。

 

 

高田馬場店は現在関東圏で唯一のスガキヤ。駅から微妙に遠いのがもったいない。

 

店内に入ってすぐの券売機で食券を購入する。

 

何はなくともまずはビール。

そしてメインのラーメンとミニみそかつ丼のセット。

半熟玉子のトッピングがあったのでそれも追加する。

 

食券を持ってカウンターに向かおうとすると、

 

「んー。本当はみそかつ丼じゃなくて五目ごはんなんだよね」

 

と、注文の段階から名古屋嬢のチェックが入った。

 

「え、みそかつ丼は名古屋名物なのに違うの?」

 

調べてみるとみそかつ丼は、ごく一部のスガキヤだけでの販売。

東京では名古屋色を出すためにメニューに加えたのだろう。

本場で主流となっている五目ごはんはメニューになかった。

 

いきなり本場と違うという予想外の展開に動揺しつつも、

まずはビールで乾杯。ほどなくメインのラーメンが出てくる。

と、同時に次の異変に気付いてしまう。

 

「あ! レンゲだよ。これ!」

 

事前の調査でスプーンに個性あり、との情報を得ていた僕が叫ぶ。

 

「あー、先割れスプーンね。さすがにここにはないんじゃない」

 

名古屋嬢が冷静にレンゲでスープをすすりながら言う。

 

先割れスプーンはスガキヤの象徴ともいうべき存在。

給食のときに出てきた先割れスプーンとも微妙に違う。

フォークとスプーンが融合したような、実に奇妙なスプーンらしい。

 

「あのスプーンで食べたかったのに……」

 

がっくりしながらも、レンゲでスープをすする。

と、ここで次の衝撃が襲ってきた。

 

「ずずず……。んん! 何このスープ!」

 

見た目はどこからどうみても豚骨スープ。

だが、1口すすると強烈な魚介系の旨みを感じる。

 

純和風で超濃厚。

直球勝負の実にわかりやすい味だ。

 

「なにこのダシ。カツオブシ?」

「んー。子どもの頃はネズミのダシって言ってたね」

「ネズミ!?」

 

これも調べてみたら情報がボロボロ出てきた。

 

おそらく某ハンバーガーチェーンのミミズ説と同じだろう。

値段の安さからくる根拠のない、都市伝説のような噂話。

ネズミのほかにもヘビでダシをとっているとの噂もあった。

 

「んで、味のほうは本場と同じものなのでしょうか?」

「そうだね。味は一緒じゃないかな」

 

全体的な印象としては、どこか懐かしくチープな味。

麺もコシだなんだとうるさいことを言わなければ充分おいしい。

半熟玉子をとろかして食べると、ちょっと豪華なインスタントラーメン風になった。

値段なりに満足できる味だと思う。

 

 

スガキヤラーメン(トッピングに半熟玉子)とミニみそかつ丼。

 

さて、スガキヤの魅力は最後の甘味にもある。

 

僕らが入店した時もちょうど1組のカップルが、

ラーメンの器を前にシメのソフトクリームを食べていた。

 

見れば名古屋嬢も最初からクリームぜんざいを注文している。

 

僕も負けてはいるわけにはいかないと、

慌ててソフトクリームの食券を買いに走った。

 

普段の感覚ではあまり試さない組み合わせだが、

実際に食べてみると、これがなかなかいい。

ラーメンでしょっぱくなった舌が甘みで癒され、

熱でほてった身体もさわやかに鎮めてくれる。

 

「デザートのソフトクリームいいねえ。甘くて冷たくて」

 

のんきに喜びながら1本ペロリと食べてしまった。

 

 

スガキヤの魅力は甘味がしめる割合も大きい。

 

こうしてスガキヤを満喫しているうちに、

我らが名古屋嬢もだんだん勢いに乗ってきたようだ。

 

「名古屋の喫茶店にはトランポリンがあるんだよ!」

「名古屋は冷やし中華にマヨネーズが基本なんだよね!」

「味噌煮込みうどんの麺は固いのが当たり前!」

 

次々に聞いたこともない名古屋の常識が飛び出してくる。

 

どれも荒唐無稽で信じがたい話なのだが、

そのうち名古屋ならそうなのだろうと納得している自分が怖い。

 

 

あんまり盛り上がったので、スガキヤの後は2次会に。

名古屋つながりということで、手羽先唐揚専門店の鳥良に行った。

 

鳥良は東京の吉祥寺に1号店を作った東京地域のチェーン店だが、

社長が名古屋出身で「手羽先唐揚を東京で広めること」を目的に開業。

メニューには手羽先のほか、どて焼き、天むすなどの名古屋名物が並ぶ。

 

ラーメンの後に居酒屋と、順序は逆になったがビールで乾杯。

 

名古屋にこだわった1日となり、

僕も少しだけ名古屋人の魂に触れられたのだった。

 

  

左から手羽先、どて焼き、天むす。ラーメン、みそかつ丼、ソフトクリームをたいらげた後の2次会でもまだまだ食べる。

 

<美味なる料理データ>

美味なる料理 :スガキヤラーメン

美味なるエリア:愛知県を中心に東海地方

美味なる種類 :麺料理

美味なる価格帯:280円(高田馬場店は300円)

 

<美味なる料理リンク>

スガキヤ公式ページ(スガキコシステムズ株式会社)

http://www.sugakico.co.jp/

スガキヤラーメン高田馬場店 メニュー

http://www.sugakico.co.jp/header.html

 

 

 

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