美味なるニッポン!

第3回:博多うどんの不思議に迫る!

 

美味なるニッポン!第3回

 

<博多うどんの不思議に迫る!>

博多に足を踏み入れる前、こんな話を聞いた。

 

「博多の天ぷらうどんは少し違うらしい」

 

なるほど。確かにうどんは地域差の多い料理。

麺の太さや、形状、食感など、個性的なうどんがたくさんある。

秋田の稲庭うどん、香川の讃岐うどん、愛知のきしめん。

博多のうどんも、特徴的な何かがあるのだろう。

 

と、思っていたら、また別の情報が入ってきた。

 

「博多の天ぷらうどんは、うどんではなく天ぷらが違うらしい」

 

ん、天ぷらが違う?

そこで、僕はうーんと考え込む。

 

天ぷらうどんといったら、天ぷらが乗ったうどん。

高級店なら海老の天ぷらが乗り、庶民的な店ならかき揚げが乗る。

別の天ぷらが乗ってはいるが、どちらも天ぷらであるには違いない。

 

もともと、少しずつ違って当たり前なのが天ぷらうどん。

 

それを踏まえても違うというのは、相当変わった天ぷらを使うのだろう。

明太子の天ぷらや、とんこつラーメンの天ぷらがあるのかもしれない。

 

と、悩んでいたら、最後の情報が入ってきた。

 

「博多の天ぷらは、別名を丸天というらしい」

 

これで、さらに話がわからなくなった。

 

丸天とはいったいどんな食べ物であるか。

天ぷらが丸いのか。あるいは丸いものを天ぷらにしたのか。

すっぽん鍋のことを丸鍋というが、すっぽんの天ぷらだったりするのか。

 

与えられた情報は、僕を大いに混乱させた。

 

ああでもない。こうでもない。

僕は微妙な想像力を働かせつつ、悩みに悩み抜いたすえ、

博多まで行って、天ぷらうどんを食べて来た。

 

百聞は一食にしかず。案ずるより食うが易しだ。

 

 

天神周辺。うどんの店がなかなか見つからない。

 

3月某日、博多天神。

 

宿泊先のホテルが天神にあったため、その周辺でうどんの店探しを始める。

天神は福岡市の中心地で、有名な親富孝(親不孝)通りのある繁華街だ。

飲食店の数も多く、さまざまな業種の店がしのぎを削っている。

 

が、ここでトラブル発生。

 

土地勘がないため、うどんの店を見つけられない。

駅前まで行けばあるだろうと、賑やかなほうを目指したのがアダ。

デパートをはじめとした巨大ビルが林立するばかりで、

とてもうどんの店があるような雰囲気ではなくなってしまった。

 

天神駅周辺から、西鉄天神駅を経由し、右へ、左へと迷走。

気づけば、天神の隣駅である赤坂駅周辺を放浪しており、

いつの間にか、また天神駅まで舞い戻ってきていた。

 

博多の地理を知らない人には、訳のわからない説明だが、

ともかく右往左往しつつ、博多の都合2時間ほど歩きに歩いた。

 

途中で、やっと1軒だけうどんの店を発見したものの、

それが讃岐うどんの全国チェーン、はなまるうどんでは意味がない。

博多まで来て、讃岐うどんを食べている場合ではないのだ。

 

そして、こういう目一杯頑張ったときというのは、

えてして、それに見合うだけの、皮肉な結末が待っているもの。

 

目指すうどんの店は、最終的に、

出発地点のホテルから徒歩1分のところで見つかった。

 

 

やっと見つけたと思ったら讃岐うどんのチェーン。はなまるうどんは好きだが、今日のところは意味がない。

 

さて、ここからがいよいよ本番。

僕はカウンター席に腰掛け、気持ちの準備を整える。

 

「ご注文、どうなさいます?」

 

店のおばちゃんが、水を運んでくるとともに声をかけてきた。

僕は、東京からずっと温めてきた言葉を慎重に伝える。

 

「天ぷらうどん、お願いします!」

 

ビシッと、効果音がつくくらいきっぱりと言った。

それに対して、次のような言葉が返ってくる。

 

「はい、天ぷらは何になさいますか? 丸天でいいですか?」

「は、はい!」

 

出た。やっぱり天ぷらは丸天なのだ。

心の中で、激しく興奮していると、間髪入れず次の問い。

 

「丸天は食べやすい大きさに切りますか?」

「い、いえ、そ、そのままで!」

 

まだ未知の天ぷらだけに、できるだけ現状を留めていて欲しいと思った。

訳がわからないまま、切らないで欲しいと頼んでしまう。

 

しかし、切るというのはいったいどういうことだろう。

 

海老の天ぷらや、かき揚げだったら、まず切るようなことはしない。

食べやすい大きさに、ということはそうとう大きいのだろうか。

あるいは、切らないと食べにくいような形なのか。

 

横目で他の客が食べているうどんをチラチラ見ながら、

丸天とやらの乗った、博多式天ぷらうどんが来るのを待った。

 

 

「はーい、丸天うどんです」

 

と、声をかけられて、背筋がピクンと伸びる。

来た。いよいよ、博多の天ぷらうどんとの対面である。

 

いったいどんな天ぷらなんだ……あ、あれ?

 

運ばれてきたどんぶりを見て、僕は思わず自分の目を疑った。

 

 

「この天ぷらうどん。フタがしてある……!?」

 

 

と、思ったのは一瞬。

 

それが、フタでないことにはすぐ気づいた。

フタに見えたのは、丼いっぱいに敷き詰められた天ぷら。

 

いや、天ぷらと言ってよいのかもよくわからない。

少なくとも、僕の目にはさつまあげのような練り物に見えた。

 

さつまあげらしきものが、うどんの上にどーんと鎮座している。

 

丸天という名前だけあって、丼の縁をなぞるような円形。

厚さは1センチにちょっと満たないくらいだろうか。

キツネ色の焦げ目がついて、いかにもおいしそうではあるが、

天ぷらを想像していただけに、ずいぶん予想を裏切られた感じだ。

 

「こ、これが天ぷらなのか……?」

 

丼を目の前に、思わず動きが止まってしまう。

 

目の前にあるのは、どこからどう見ても、おでんの具そっくり。

そもそも天ぷらなのに、衣がまったくついていない。

 

間違って運ばれてきたという可能性も一瞬考えたが、

運んできたおばちゃんは、確かに「丸天うどんです」と言っていた。

 

何故だ。

 

納得のいかないまま、僕は丸天に箸を突き立てる。

 

油揚げや、かき揚げほど柔らかくはないので、

少し力を入れないと、思うようにちぎれていかない。

 

やはりハサミで切ってもらったほうがよかったのだろう。

ある程度の大きさに分割したところで、思い切ってかぶりつくことにした。

 

がぶっとかじると、思いのほか柔らかな食感だった。

魚をすり身にしたときの、ほのかな甘さも口に広がる。

 

せっかくなので、うどんも一緒にすすりこんでみる。

 

なるほど、うどんとの相性も悪くない。

ぷりっとした丸天と、もちもちの麺という食感の対比もいい。

 

想像していた天ぷらうどんとは、ずいぶんかけ離れていたが、

これはこれで、十分においしいうどんだと思った。

 

丸天うどん。丼にフタがしてあるのかと思った。

 

となると、残るは、なぜこのうどんを、天ぷらうどんと呼ぶのかだ。

僕の感覚でいえば、さつまあげうどんであって、天ぷらうどんではない。

 

いろいろ調べてみたところ、次のようなことがわかった。

 

 

博多で言う「天ぷら」には2種類の意味があるらしい。

 

 

ひとつは海老天のように、食材に衣をつけて揚げた料理。

もうひとつが、おでん種に使用されるような魚の練り物。

 

この両者を「天ぷら」として呼んでいるようだ。

丸天は後者であり、「丸い天ぷら」を縮めて呼んだものだろう。

 

もちろん前者の「天ぷら」という言葉も普通に使われており、

丸天同様に、うどんの具としても活躍している。

 

他地域で言う、いわゆる「天ぷらうどん」もない訳ではない。

 

ただ、丸天のような「天ぷら」も存在するがために、

混同を避ける意味で、両者をきちんと呼び分ける必要が出てくる。

 

海老の天ぷらが入れば、それは「海老天うどん」であり。

かき揚げが入れば、それは「かき揚げうどん」だ。

丸天のうどんも、通常は「丸天うどん」と呼ばれている。

 

その中で、特に「天ぷらうどん」と言った場合は、

「丸天うどん」のことを指す場合が多い、ということらしい。

 

 

さあ、これできちんと謎がとけた。

 

ということで、きれいにまとめようと思ったら、

最後の最後になって、もうひとひねりされてオチがついた。

 

「博多のうどんは、ごぼう天うどんもうまいらしい」

 

こんな情報が飛び込んできたからである。

 

ごぼう天うどん。あるいは、ごぼ天うどん。

つまるところ、ごぼうの天ぷらがうどんに乗ったものである。

 

その話を聞いた瞬間、僕の脳みそに閃光が走った。

 

「あ、わかった。そのごぼう天ってあれでしょ。おでんに入っているやつ!」

 

丸天が丸い形の練り物なら、ごぼう天はごぼうの練り物に違いない。

ごぼうを芯にして、外側を練り物で包んだもの。

 

丸天うどんと同じ理屈で、あれがうどんの具として乗っているのだ。

 

 

と、思ったら、なんとこれがまた違う。

 

再度うどんの店に行って食べてみたのだが、

出てきたのは、ごぼうに衣をつけて揚げた天ぷらだった。

 

先ほどの例でいけば、前者を意味する天ぷら。

ごぼうを天ダネにしたものが、ごぼう天だったのだ。

 

 

天ぷらだと思えば、練り物になり、

練り物だと思えば、天ぷらが出てくる。

 

 

博多のうどんは、本当に奥が深い。

 

 

博多うどんの老舗、かろのうどん。右はかろのうろんのごぼう天うどん

 

<美味なる料理データ>

美味なる料理 :博多うどん

美味なるエリア:福岡

美味なる種類 :麺料理

美味なる価格帯:4500円程度

 

<美味なる料理リンク>

ウィキペディア うどんの項目

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BB%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%86

ウーマンエキサイト かろのうろん

http://woman.excite.co.jp/gourmet/restaurant/shop_54677.html

 

 

 

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