コリアうめーや!!メルマガバックナンバー
コリアうめーや!!第78号
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<ごあいさつ> 6月になりました。 光まぶしい新緑の5月が過ぎ、 梅雨の気配がじわじわと近づいています。 毎日、雨の心配をしながら生活する、 そんな鬱陶しい日々が今年もやってきます。 ああ、湿気ベトベトは嫌だなあ……。 と、ため息をつく今日この頃ですが、 そんな6月を迎える直前、 日本列島はあちこちで突然の猛暑に襲われました。 ここ数日、本当に暑かったですねえ。 八田氏も暑さにやられ、まだ5月だというのに、 今年初めての冷やし中華を食べてしまいました。 梅雨入りを前に、早くも夏を迎える準備万端です。 というところで、今号のコリアうめーや!!ですが、 ちょっと思うところがありまして、 初めて韓国に行ったときのことを書こうと思います。 詳しい経緯は省きますが、初韓国で出会った出来事を、 今号、次号と2回にわたって紹介します。 どのみち恥ずかしい話ばかりなんですけどね。 コリアうめーや!!第78号。 あの頃に向かって、スタートです。 |
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<プルコギの思い出1997冬!!> 「韓国人のチンジョルを見せてあげましょう」 横断歩道を渡る手前で、社長が言った。 金縁メガネの奥で、細い目がきゅっと笑う。 「ち、ちんじょる……!?」 僕が韓国語を理解できないでいると、 横を歩いていた友人が、すっと耳打ちしてくれた。 「親切のこと。チンジョルは親切の意味だよ」 「あ、なるほど……」 韓国人の親切を見せてあげましょう……か。 でもそれって、いったいどんな親切なんだろう。 そもそも日本では「親切を見せる」とはあまり言わないよな……。 などと、ぼんやり考えながら、 僕は、右も左も、前も後ろもわからない道を歩いていた。 僕が歩いているのは、釜山のとある繁華街。 それもどこだかすら、よくわからない繁華街。 韓国に初めてやって来た僕は、韓国人の友人に案内されるまま、 あっちだ、こっちだと、連れられて歩いていた。 市場を見にいくぞ、と言われれば、それについていき、 昼飯に冷麺を食べるぞ、と言われれば、出されるままに食べ、 宿はここにしなさい、と言われれば、そこに泊まった。 「うーん、このホテルは安いけど、ラブホテルみたいなところだね」 「ええっ、そ、そんな所に泊まっていいの!?」 「うん、大丈夫、大丈夫」 「ほんとに!?」 今なら、それがごく普通のことだとわかる。 韓国の格安ホテルには、いわゆるアレ目的のところと、 純粋な宿泊目的のところに、確固たる線引きがない。 どちらの目的にも使われるのだ。 だが、その頃の僕は、そんなことも知らず、 おおおお、なんだかスゴイことになってしまったな。むふむふ。 これはハプニングか? 旅のハプニングなのか? うひうひ。 と荒い鼻息を周囲に撒き散らし、 友人が家に帰ったあと、そっと壁にコップを当ててみたりした。 今をさかのぼること7年前。 1997年2月のことである。 そして、この日。 僕は友人の勤めるアルバイト先まで、ノコノコとついていき、 図々しくも、そこの社長に夕食をご馳走してもらうことになったのだった。 |
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釜山の風景。あのとき歩いた道がどこだったのかは、今もわからない。 |
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「さあ、ここです」 社長が案内してくれたのは、ずいぶんと高級そうな店だった。 韓国の伝統家屋を模した造りで、落ち着いた雰囲気に包まれていた。 僕は社長に、そして友人に促されるまま席につく。 ほどなくして、テーブルに料理が登場。 だが、僕にはそれが何の料理であるかわからない。 なにしろ、初めて踏んだ韓国の地。 韓国料理についての知識もほとんど皆無だった。 「これがプルコギだよ」 と、友人が横で、教えてくれる。 僕は鉄板の上で、徐々に火が通ってゆく肉を見ながら、 「プルコギって、確かガイドブックに載っていたなあ……」 という程度の、生ぬるい感動を味わっていた。 プルコギとは、牛肉を専用の鉄板で焼いた料理。 鉄板は中央が盛り上がっていて、ジンギスカン鍋に似ている。 薄切りの牛肉に、醤油、砂糖、清酒などを混ぜ合わせたタレで下味をつけ、 それを、タマネギ、春菊、タンミョン(韓国の春雨)などの材料と焼く。 ただしタレに水分があるので、焼くというよりも少し煮る感じになる。 いわゆる焼肉の一種類ではあるが、焼いてからタレにつけるのではなく、 あらかじめタレにつけこんでおくところがポイントである。 肉にタレの旨さが染み込み、食べたときに甘さがじゅわっと広がる。 タレには梨などの果物を用いる場合が多く、全体的に甘い味付けなのだ。 イメージとしては、焼肉とすき焼きの中間に位置するような感じ。 韓国料理の中では、相当メジャーな地位にあり、 プルコギを知らないというのは、日本に来て天ぷらを知らないのと同レベルだ。 「さ、さ、どうぞどうぞ」 お客さまであるため、イの一番にすすめられる。 「あや、どもどもども。す、すいません。すいません」 韓国の食事マナーでは、目上の人が箸をつけるまで待つものだが、 そんな基本的なことも知らないので、恐縮しつつも手は伸ばす。 そして、初めてのプルコギ体験。 牛肉の柔らかそうなところを箸でつかんで、ぱくり。 もむもむもむもむ。ごくん。 「おおおおおお、う、うまいですっ!」 正直、本当にうまかった。 柔らかい牛肉が、口の中でしっとりとほぐれ、 噛みしめるごとに、甘さ、旨さがにじみ出てくる。 日本で食べる焼肉とは、また違う味。 どこか、洗練された肉料理という印象を受けた。 |
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プルコギ。左の写真で上に乗っている白い麺がタンミョン(韓国の春雨)。日本の春雨よりも若干太く、緑豆などから作られている。 |
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「さ、さ、もっと、どうぞどうぞ」 「あや、いやいやそんな。そうですか? ではではでは」 遠慮なく、ばくばく食べる。 また、渡されたグラスに、焼酎もどんどん注がれる。 まだ韓国の焼酎がどれほど危険か知らない頃なので、 無鉄砲にも、ぐいぐいと飲んでしまう。 当然のごとく、僕は酔っ払い始めた。 大学で習ったカタコトの韓国語を駆使し、 むちゃくちゃブロークンに会話を展開していく。 相手の名前を苗字だけで呼んでみたり(韓国ではとても失礼)、 友人の先輩に対し、丸ごと覚えた、超タメ口で話しかけたり。 「よお、元気か?」 本人は「調子はどうですか?」くらいの気持ちだが、 まわりの空気が一瞬にして凍りつく。 韓国での、酒にまつわる失敗談は多いが、 思えば、このときにすべてが始まっていた気がする。 振り返るのも恥ずかしいが、なぜかこういう記憶は鮮明である。 「さ、さ、どんどん食べてください」 金縁メガネの社長は、まだまだ僕にすすめてくれる。 だが見れば、鉄板の上のプルコギは、もう残りわずかだった。 「さ、さ、どうぞどうぞ。お客さまなのですから」 「いやあ、もう充分に頂きました」 「なにを言いますか。韓国人の親切をお見せするといったでしょう。たとえ自分が食べたくとも、人 にすすめるのが韓国人なのです」 「ははあど。自分が食べたくとも、人にすすめるのが韓国人ですか……」 そこで、酔っ払いの僕は、鈍りきった思考を働かせる。 それが韓国人気質だとすると、僕は日本人気質で対抗する必要があるな。 日本人も他人にすすめるのがマナー……だと同じになってしまう。 ここはひとつ、日本人のオリジナリティを見せなければなるまい。 などという、とんでもない論理を導き出し、 「あ、そうですか? では、頂きます。何しろ人にすすめられたものは、一切断らないというのが日 本人で……」 などと勝手な日本人像をでっち上げて、酔っ払いは会話を続ける。 「たとえ満腹でも、出されたものはすべて平らげるのがマナーなんです……」 などといいつつ、嬉しそうにガツガツと食べていく。 飲んで、食べて、ひとり突っ走って盛り上がって、 いくら外国からのお客さまとはいえ、傍若無人もいいところだ。 |
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豚のプルコギ。韓国語ではテジプルコギと呼ばれる。テジが豚の意。 |
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今考えると、冗談みたいな話だが、 情けないことに、すべて実話である。 友人も、社長も、その無作法具合にはあきれただろうが、 何も知らない外国人に、最後までニコニコと付き合ってくれた。 おかげで、このときの食事は、よい思い出として僕の中に今も残っている。 もちろん、のちに韓国の文化や、マナーをひとつずつ学ぶにつれ、 あのときのあの行動は! と後悔することも多かったが……。 僕の場合、よい思い出と、反省点は紙一重である。 というわけで、これが僕の初韓国。 今こうして韓国と長いお付き合いをしているのも、 出会った人たちが、親切に接してくれたからというのが大きい。 かつての恥も、ネタとして語ることができる事実を、 深く深く感謝せねばなるまい。 そして、この初めての韓国、失態だらけ恥かき話は、次号へと続く。 僕は、旅行中さらに大きな失態をしでかし、ある韓国人に命を救われるのだ。 あの人がいなかったら、恥を語るどころか、 この世に生きてすらいなかっただろう。 次号。乞う、ご期待。 |
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<おまけ> 初めての韓国でプルコギを食べ、いたく感動した僕ですが、その後、さまざまな韓国料理と出会い、さらなる感動を得てしまいます。その結果、プルコギの印象は相対的に薄れていき、今ではめったに食べることがありません。これは僕に限ったことではなく、韓国料理をある程度食べてしまうと、プルコギの評価はみな似たようなものになるらしいです。ご馳走を食べたいのだったら、多少高くともカルビなどの焼肉か、韓定食を食べ、逆に普段の食事にはもっと安くてうまいものがたくさんある。例えて言うなら、松竹梅の竹のポジションにあるのがプルコギなのかもしれません。初めにもてはやされ、やがて忘れられるプルコギという料理は、韓国料理におけるビギナーズラックのような存在ではないかと思います。誰しもが最初に通る道でありながら、結局は忘れられてしまう。このプルコギという料理を、もっと魅力的にする方法はないものでしょうか。 |
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<お知らせ> プルコギの写真がホームページで見られます。 よかったらのぞいてみてください。 |
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<お知らせ2> 全号でも独り言でちらっと書きましたが、0時ちょうどの配信を取りやめます。毎月1日、15日配信は変わりませんが、朝までの配信を目指し、ゆっくりと推敲、見直しなどをすることにします。とか言いつつ、逆に間違いが増えたりして……。とにかく、頑張ります。 |
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<宣伝> 関東地方の台所、築地卸売市場を紹介するちょっと変わったガイドブックが発売になりました。築地に本社と店舗を構える老舗「佃權」の四代目社長が、自ら築地を案内してしまうという趣向のガイドブックです。築地の人が、築地を紹介。この本があれば、初めての築地歩きも安心です。八田氏もちょっとだけお手伝いをさせて頂きました。 本の詳しいデータはコチラ! 書名:築地蒲鉾屋四代目の築地案内 著者:金子喬一 監修:成瀬宇平 出版社名:小学館 発行年月:2004年06月(発売中!) 販売価格:1,680円(税込) |
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<八田氏の独り言> てなわけで次号に続きます。 次はもっと恥多き話になる予定……。 |
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コリアうめーや!!第78号 2004年6月1日 発行人 八田 靖史 hachimax@hotmail.com |
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