コリアうめーや!!メルマガバックナンバー

コリアうめーや!!第59号

 

 

<ごあいさつ>

梅雨は本当に明けたのでしょうか。

雨が降りつづけ、気温も低い今日この頃。

壁にかかっている8月のカレンダーが、

どこか寂しげに見えます。

あーあ、本当に今は夏なのかなあ……。

そんな寒々した折、早くも新サンマを食べました。

丸々と太った身に、皮ぎしのとろける脂。

そしてハラワタの濃厚なほろ苦さ。

いやあ、本当にうまかったです。

夏が来ないのなら、いっそ秋の味覚を。

そんなヤケクソな楽しみ方もいいかもしれません。

さて、今号のコリアうめーや!!ですが、

疑惑の場所に潜入取材を敢行してきました。

旅行者には欠かせない観光スポットでありながら、

なかなか全貌が明らかにならないあの場所。

コリアうめーや!!第59号。

身銭を切ってのスタートです。

 

<市場にて疑惑の刺身を一刀両断!!>

市場での食事。

 

それは旅行者にとって最高の喜びである。

雑踏と喧騒の中で味わう新鮮な山海珍味。

エネルギー渦巻く市場での食事は気分を高揚させる。

 

だがその一方で、市場の食事には疑惑も多い。

それはいかにしても拭えない会計の不透明さ。

 

「ぼったくられたのではないだろうか」

 

そんな疑問がたえずつきまとう。

旅行者にとって最高の喜びでありながら、

最難関の試練でもあるのが市場の食事なのだ。

 

かくいう僕も例外ではない。

 

あれは2002年夏のこと。

韓国第2の都市、釜山で名物の刺身を食べた。

港町釜山にはチャガルチ市場という大きな水産市場がある。

 

市場に並ぶ新鮮な魚を刺身にしてもらい、

昼間から優雅にビールでも飲もうという考えだった。

 

「いいねえ。いいねえ。刺身いいねえ」

「いいねえ。いいねえ。ビールいいねえ」

 

僕と友人は満面の笑顔で市場へと向かった。

 

  

チャガルチ市場

 

さて、市場で刺身を食べる場合。

まずは魚選びと値段交渉をしなければいけない。

 

韓国ではいけすで泳ぐ魚を1匹まるごと購入し、

それを刺身にしてもらうシステムが一般的だ。

好みの魚を自分で選び、その魚に応じて値段を支払う。

 

また、市場はスーパーと違って値札などない。

あくまでも交渉次第。自分がどこで納得するかの勝負である。

 

僕は値切りに値切って、以下の魚を購入した。

ヒラメ1匹、クロソイ1匹、アジ4匹、アナゴ1匹、テナガダコ3匹。

この量でなんと3万ウォン(約3千円)である。

 

ただしそれが適性価格なのか、割安なのか。

あるいはまだまだ値切れたはずなのかはわからない。

ともかく僕としてはかなり頑張ったほうだ。

 

「ええっ、こんだけ買って3千円?」

 

韓国に初めて来た友人は目を丸くして驚いた。

 

「ふふふ、まあな。これならまずぼられちゃいないだろう」

 

僕は人差し指で鼻の下をスリスリこすりながら、

漫画のように得意がってみせた。

 

「いやあ、韓国語ができるってすごいねえ」

 

友人は僕を尊敬の眼差しで見つめた。

 

ヒラメ、クロソイ、アジ、アナゴの刺身盛り合わせ

 

ところがである。

問題はここからだったのだ。

 

いざ食べようとテーブルにつくと、出てきた刺身が明らかに少ない。

 

「おいおい。なんか刺身減ってないかい?」

 

尊敬の眼差しで見つめていたはずの友人の目が、

みるみるうちに疑心暗鬼の目へと変わっていく。

 

「こ、これはやられたか……」

 

このとき市場で購入した魚は、

その場でさばかれず刺身専門店へと引き渡されていた。

魚を買ったその場で食べさせてくれるところもあるが、

別の店でという分業システムのところもある。

 

刺身専門店の厨房に消えて、我々の食卓に出てくるまで。

その空白の時間が果てしなく怪しいではないか。

 

前もって準備していた魚とすり替えることは充分に可能。

あるいは身を少し残しておいて、別で使うという可能性も考えられる。

 

だがその疑いはあくまでも推論であり、確証はない。

一生懸命値段交渉をしたところまではよかったが、

そこで安心してはいけなかったのだ。

 

「市場では片時も魚から目を離してはいけない」

 

それが市場での教訓であった。

 

  

韓国の刺身はサンチュやゴマの葉で包んで食べる。

 

韓国の市場で刺身を食べたことのある人なら。

似たような経験をした人も少なくないのではと思う。

いくら韓国文化に熟達しても、市場は謎に包まれている。

 

それが市場のルールといってしまえばそれまでだが、

旅行者としてはなんとももどかしい。

 

僕は思った。

 

やはりこのままではいけない。

市場の真実を知らねば安心して刺身を食べることができない。

 

これは自分だけのためではない。

そう、すべての旅行者のために。

市場の真実を解き明かすのが僕の使命である。

 

というわけで、釜山までリベンジに行ってきた。

合言葉は「適性価格で適性量の刺身を」である。

 

僕のたてた作戦はこうだ。

前回の反省を活かし、今回は厨房の中まで潜入する。

デジカメをかかえ写真を撮っているフリをしつつも、

自分の購入した魚が皿の上にきちんと盛られるのか確認。

 

万が一にでも違う魚とすり替えたり、

食べられそうな身を抜き取ったりするようなことがあれば、

全力をもって糾弾しようという考えである。

 

僕は事前に考えておいた口実を店の人にぶつける。

 

「すいません。僕は日本から来た旅行者なのですが、韓国の食文化に関心があります。よかったら刺身を作るところを見学させて頂けないでしょうか」

 

「ああ、別にかまわないよ」

 

疑惑の厨房に入ることを許された僕は、

心臓をバクンバクンいわせながら、一連の作業をみつめる。

 

じっとみつめていては、不正を働くことができないだろうから、

少し離れたところで別の魚をさばくおばちゃんに密着することにした。

 

厨房のおばちゃんたちは、鮮やかな早技で魚をさばいていく。

僕がデジカメで撮影するほうが追いつかないくらい。

熟達の腕で、あっという間に刺身盛り合わせは完成した。

 

結論からいうと、横目でチラチラと観察していたが、

違う魚とすり替えたり、半身を抜いたりする素振りはまったくなかった。

魚をまな板に置くところから、刺身完成までの流れるような動き。

そこには一片の疑惑も感じられなかった。

 

  

  

市場のおばちゃんたちは鮮やかな手つきで魚をさばいていく。

 

そして僕はできあがった刺身を見て真実を知る。

 

「魚って、意外に食べるところ少ないんだなあ……」

 

市場の刺身は日本のように繊細ではない。

豪快にズバッズバッとさばいていくため、

身の1番いいところ以外は大胆にそぎ落とされる。

 

また刺身の造り方そのものもかなり違う。

 

日本であれば包丁の全体を大きく使い、

細胞を壊さないように丁寧に大きく魚を切っていく。

盛り付けも見た目にこだわって1枚、1枚きちんと盛る。

 

だが韓国の市場では、包丁の勢いでザクザクと切る。

それはまるで大根の千切りを作っているかのようだ。

できた刺身も大皿にごちゃっと盛るので、かさは減って見える。

 

それを見て僕らは、騙されたと勘違いしたようだった。

 

かくして結論は以下のようになる。

 

「韓国の市場に嘘偽りはない」

 

ああ、よかった。

これで、安心して刺身を食べることができる。

市場でぼられたの、ぼられていないのと悩む必要がない……。

 

はずなのだが。

 

やっぱり怪しいと感じるときはあるんだよね。

そのあたりまでを含めて市場の魅力なのかもしれない。

 

「ああ、ぼられた……」

 

というところにも旨さがある。

そういう料理だと思えばきっと悔しくはない。

 

<おまけ>

一口に韓国の市場といっても様々なところがあります。ここでは市場と刺身の疑惑について述べましたが、そのほかにも魅力的な市場がたくさんあり、さまざまな料理を食べることができます。また今回は疑惑の部分をクローズアップしましたが、値段の不明瞭な店はあくまでもほんの一部に過ぎません。ぼられたと思っても、こちらの疑心暗鬼であることも少なくないようです。韓国の市場は怪しいところではありません。その点のみご理解頂ければと思います。

 

<お知らせ>

韓国式刺身の写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<お知らせ2>

『八田式「イキのいい韓国語あります。」−韓国語を勉強しないで勉強した気になる本−』は大好評発売中です。公共の場で読むと自分でも知らぬうちに顔がニヤニヤ崩れ、いかにも怪しい人になってしまいます。くれぐれもご注意ください。

 

書籍に関する詳しい情報はコチラをごらんください。

http://www.koparis.com/~hatta/news_000.htm

 

<八田氏の独り言>

市場で刺身のドキドキ感は、

鮨屋のお会計と似ている気がする。

 

コリアうめーや!!第59号

2003年8月15日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

 

 

戻る

トップページへ