コリアうめーや!!メルマガバックナンバー
コリアうめーや!!第51号
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<ごあいさつ> 4月も半ばになり、ずいぶん暖かくなりました。 雨が降っているので、寒いかなあと着込んで外に出ると、 意外に気温が高くてびっくりしたりします。 またその一方で、天気がよいからと薄着で出ると、 夕方過ぎに日が陰って、突然寒くなったりもします。 東京では桜の花もすべて散り、青々とした葉桜になりました。 新緑映える5月ももうすぐそこです。 さて、今号のコリアうめーや!!ですが、 再び地方巡りの旅に戻ろうと思います。 ただしあんまり地方続きというのも芸がないので、 そろそろ地方の話と、そうでない話を、 ぐちゃぐちゃに混ぜて書いていこうかとも思っています。 とりあえず今回は全羅北道全州の話。 ビビンバで有名な全州という町ですが、 もうひとつの名物に焦点を当ててみました。 コリアうめーや!!第51号。 栄養満点のスタートです。 |
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<グラグラ煮え立つモヤシのスープ!!> 「こんなのは6次会とは言わんのだ!!」 目の前の男は大声でがなりたてた。 僕らは6次会がわりにと、コンビニでアイスを食べていた。 飲んで、飲んで、さらに飲んで、カラオケ行って、場所をかえて飲んで、 その後だらだらとコンビニまでやって来たのだった。 コンビニでカップ麺をすすろうという案もあったのだが、 うやむやのうちに却下され、なんとなくみんなでアイスを齧った。 確かにこれを6次会と呼ぶには、微妙なところだ。 「ようし、八田くん。コンナムルクッパプを食べに行こうじゃないか。」 男は僕の肩を抱き、酒臭い息を吐きながら笑ってみせた。 あたりはすでに明るくなっていた。 狂乱の一夜もすでにクライマックスを過ぎ、 それぞれ家のベッドが恋しくなるころである。 盛り上がりの残骸をかき集め、男は懸命に笛を吹いたが、 結局解散の流れを止めることはできなかった。 みんな思い思いの方向に足を向け、帰途についた。 僕はひとり思った。 「コンナムルクッパプって何だろう……。」 |
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コンナムルクッパプ。 |
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韓国語でコンナムルとはモヤシのこと。 クッパプはスープにごはんを入れた料理の総称で、 日本ではクッパと呼ばれることが多い。 簡単に言うと、モヤシスープにごはんを入れた料理のこと。 韓国の南西部に位置する全州の名物料理として知られ、 ビビンバとともに全州を代表する郷土の味である。 煮干、昆布、ダイコンなどを煮込んだスープに、 たっぷりの豆モヤシを入れ、塩、醤油、唐辛子で味付ける。 チゲほどの辛さはなく、胃に染み渡るような温かさが嬉しい。 2日酔いの朝に食べるメニューとしても人気があり、 先ほど6次会がどうたらとわめいていた男は、 酔い覚ましに食べようと騒いでいたのである。 「なるほどなあ……。」 と僕が理解したのは、6次会終了から1年半が過ぎた頃だった。 |
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全州の市場ではモヤシが大量に売られている。 |
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そのコンナムルクッパプを全州で食べて来た。 友人に教えられたコンナムルクッパプの専門店は、 ちょうど昼時だったこともあり、サラリーマンでごった返していた。 この店のメニューはコンナムルクッパプひとつしかない。 僕が席につくと、ほとんど待ち時間なく料理が出てきた。 目の前に並んだのはモヤシのスープと、卵の入った器。 そして大根キムチと白菜キムチの皿がひとつずつ。 加えてやけに大きな海苔の袋がどさっと置かれていた。 モヤシスープは石焼きビビンバのような石の器に盛られており、 少しオレンジがかったスープに透けて大量の豆モヤシが見えた。 この豆モヤシの下にはごはんが沈んでいるはずだ。 卵の器には少し白身が固まりかけた卵が2個入っている。 半熟卵とも温泉卵とも言えないくらいの微妙な固まり具合。 限りなく生に近い状態で、半熟というより生熟といった感じだ。 海苔は1帖の半分くらいのサイズ。 通常食卓に並ぶ海苔の4倍サイズといっても言いだろう。 とにかく食卓には似つかわしくない大きさのものが置かれている。 |
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目の前に並べられたものたち。 |
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さて、これをどうやって食べたものだろう。 卵をスープの中に落として食べればよいのだろうか。 僕は料理を運んできてくれたおばちゃんに、食べ方を尋ねた。 「#$%&’*%&”@8$#!!」 「は?」 「#$%&’*%&”@8$#!!」 「え?」 おばちゃんの説明は方言混じりである上、 昼時の忙しさのあまり、興奮に満ちた語り口調だった。 加えて、食べ方は相当に複雑であるようで、 僕は言われていることが、さっぱり理解できなかった。 2個の卵はどうにかしなければいけないようだし、 やけにでかい海苔もなんらかの方法で使用するようである。 だが、その手順というものが僕にはわからなかった。 口を半開きにしたまま、ぽかんとおばちゃんを見つめていると、 おばちゃんはカウンターのほうに何事か叫んで行ってしまった。 すると、あらあら仕方ないわねえ、という表情で店長らしき女性が駆け寄ってきた。 やって来た店長は僕の顔を正面から見据えてにっこり笑い、 身振り手振りで食べ方を実践してみせてくれた。 彼女がやるのを見ていると、 この料理には実に複雑な作法があるのだとわかった。 まずアツアツのモヤシスープにスプーンを突っ込み、 スープを2、3さじすくって生熟2個卵の器に入れる。 続いて卵の黄身を2つとも突き崩し、ざっと大きくかき混ぜると、 僕にスプーンを手渡し、卵の味をみるようにすすめた。 彼女は落語家がよくやるように、 口を大きく開けながら右手ですくって食べるしぐさをした。 どうやら僕は、まるで言葉のわからない外国人と認識されたようだ。 満面の笑顔と万国共通のジェスチャー。 そういえば留学当初はいつもこうして食事をしていたなあ……。 僕は頭の片隅でちらっとそんなことを思った。 |
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卵の器にスープを入れ海苔を散らして飲む。 |
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スープを少量注いだ生熟卵は、ずるもわっとした食感で、濃厚な黄身の味がした。 なるほど、こうして食べるものだったか、と思った瞬間。 横で見ていた彼女は満足そうな表情で、僕のスプーンを奪っていった。 奪ったスプーンでさらにスープを卵の器に足し、 今度は袋に入った海苔を、袋に入ったままの状態で大きくちぎり始めた。 適当な大きさになったものを袋から出し、さらに細かくちぎる。 そうして紙吹雪のようになった韓国海苔を、 スープ入り生熟2個卵の器にぱらぱらと振った。 刻んだ青唐辛子も少量加え、僕にまた食べろのジェスチャーをした。 スープ、海苔、青唐辛子が入った生熟2個卵の器は、 いつの間にか一品料理のようなスープに変化していた。 卵の濃厚な味わいに、海苔の表面についたゴマ油の香ばしさ、 青唐辛子のさりげないピリ辛さの隣に、微かなモヤシ風味がある。 これらが複雑に絡み合って、実によい塩梅のスープになっているのだった。 「ありゃあ。これはうまいなあ……。」 まさに卵のうまさ200%とという味であった。 モヤシスープのほうは、そのまま食べてよいようだった。 スープをすすり、シャキシャキモヤシを食べながら、 合間、合間でスープ入り生熟2個卵をずるもわっと飲む。 これは栄養がありそうだ。 と、僕は思った。 食べ始めてしばらくたったところで、 最初のおばちゃんが何やら料理を運んで来た。 それはモヤシスープだった。 石の器ではなくプラスチックのドンブリに入ったモヤシスープ。 どうやら、モヤシを好きなだけ追加しなさいということのようだった。 厨房に戻ったかと思うと、またも何かを運んで来た。 今度は茶碗に入ったごはんだった。 これも足らなかったら追加しなさいということだった。 食べている間からどんどん追加が出てくる。 とにかくたくさん食えという、どんどん型の店のようだった。 ふと回りを見ると、サラリーマンたちが同僚と賑やかに食事をしている。 追加のモヤシをわっせわっせと盛り、ごはんもざらざらとぶち込んでいく。 スープをすすったかと思うと、卵の器を持ち上げてずるずると飲み、 同僚と会話を交わしたかと思うと、一斉にみんなで笑う。 どうやら、コンナムルクッパプはパワーを呼ぶ料理らしい。 2日酔いの朝に活力を取り戻すスープ料理。 韓国人がいつも元気な秘密はこのあたりにありそうだ。 |
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追加モヤシスープと追加ごはん。右は刻んだ青唐辛子。 |
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<おまけ> コンナムルクッパプと一口にいっても色々なスタイルがあるようです。別の店で食べたときは卵が最初からモヤシスープの中に入っており、半熟の落とし卵になっていました。どちらの食べ方が一般的なのかはまた調査に行きたいと思いますが、どちらも卵が料理のカギを握っているという印象でした。また全州では2日酔いのときに母酒(モジュ)と呼ばれる、マッコルリに漢方薬と砂糖を入れて作った民俗酒を迎え酒として飲みます。どんな2日酔いでも母酒とコンナムルクッパプさえあれば完全復活だとのことです。八田氏はまだ2日酔いの状態で試したことはありません。 |
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<お知らせ> コンナムルクッパプの写真がホームページで見られます。 よかったらのぞいてみてください。 http://www.koparis.com/~hatta/ |
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<八田氏の独り言> 韓国は酔っ払いに寛大な国です。 2日酔いにも効果的な料理があります。 だから酔っ払いが増えるのではないかとも……。 |
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コリアうめーや!!第51号 2003年4月15日 発行人 八田 靖史 hachimax@hotmail.com |
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