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コリアうめーや!!第47号

<ごあいさつ>

日本に帰って参りました。

嬉しい楽しい1ヶ月の韓国旅行。

おいしいものをたくさん食べてきました。

地方ならではの素材を活かした料理。

ソウルではまず食べられない珍しい料理。

あんな料理、こんな料理。

とても貴重な経験をしてきました。

旅行中は整理もままなりませんでしたが、

やっと仕入れた情報も少しずつまとまってきました。

これから少しずつ紹介していこうと思います。

旅をした順序通りに語っていこうかとも思いましたが、

すでに扱った料理もあるため、少しバラバラにしたいと思います。

先陣を切るのは韓国を代表するこの料理。

その名が世界に轟くビビンバであります。

コリアうめーや!!第47号。

全羅北道全州からスタートです。

 

<ビビンバは食べるに値する料理なのか!!>

八田氏はかねてより疑問に思っていた。

眉間にしわを寄せて、髪の毛をかきむしるくらい悩んでいた。

いつまでも答えが出ず、悶々としていた。

 

八田氏の抱える疑問。

 

ビビンバは本当にうまいのだろうか。

 

まず認めよう。人気はある。そして知名度もある。

韓国料理を代表するスター料理といっても過言ではない。

韓国に興味のない人でもビビンバの名くらい聞いたことがあるはずだ。

 

だからこそ悩ましい。

そこまで知名度の高いビビンバである。皆が恋焦がれるビビンバである。

料理としての魅力は、他を凌駕するはずではないか。

だのに。だのに。だのに……。

 

ああ、正直に告白しよう。

 

八田氏はビビンバになんの魅力も感じない。

 

  

 いろいろなビビンバ。

 

断言してしまった。

興奮して少し言葉が過ぎたかもしれない。

だがどうしてもビビンバの人気が信じられないのだ。

 

韓国には魅力的な料理がたくさんある。

ビビンバももちろんその中のひとつではあるが、

これほどまでに、もてはやされる理由はないように思う。

 

突出して人気を得るほど、うまい料理ではない。

ビビンバは実力以上に評価されている気がしてならない。

 

実は今回の号を書くために、何人かの友人に質問をしてみた。

韓国に住んだ経験が長い人だけを対象としている。

返ってくる答えはほとんど同じだった。

 

「ビビンバねえ。ほとんど食べないね。」

 

そうだ。ビビンバなんてほとんど食べないのだ。

 

ビビンバは本当にうまいのだろうか。

 

その疑問を解くために、

八田氏はビビンバの本場である全州へ向かった。

 

全羅北道の道庁所在地でもある全州。

韓国でも「食都」と呼ばれるほど食文化が発達したところだ。

 

その「食都」はビビンバの本場として名高い。

全州市内には有名なビビンバ専門店がいくつかあり、

今回はその中から3つの店でビビンバを食べて来た。

  

全州市内の風景。左から豊南門、南部市場、全州市庁。

 

ひとつの店で全州ビビンバというメニューを頼んだ。

その店のビビンバは全州ビビンバとユッケビビンバの2種類。

石焼きビビンバの文字は見当たらなかった。

 

出てきたのは真鍮の器を熱したビビンバ。

石焼きではなく、こうしたスタイルもあるのかと少し驚く。

 

さて、念願の全州ビビンバである。

  

全州ビビンバ。真鍮の器は石焼きのように熱されていた。

 

ぱっと見たところ、まず具が豪華である。

ごはんの上に敷き詰められた具の数々。

その種類がかなり多いようだ。

 

まず、生野菜のグループ。

千切りしたキュウリとニンジン、そしてちぎったサンチュがある。

 

次に、ナムルのグループ。

ワラビ、豆モヤシ、ダイコン、ホウレンソウ、シイタケと並ぶ。

 

手前にあるのは牛肉。中央には卵黄と、韓国ノリ。

 

特筆すべき具としては、ファンポムク(黄泡ムク)がある。

これは緑豆のデンプンをゼリー状に固めたもので、

普通は透明な色をしているが、クチナシで黄色く染めてある。

 

全州以外ではまずお目にかからない珍しい具材。

全州ビビンバには欠かせない、大切な彩りだという。

 

 

 

しばし目で楽しんだ後、おもむろにスプーンを取った。

 

ビビンバにおける最も重要なイベントは、この混ぜる瞬間である。

全体がオレンジ色の単色になるまで、よくかき混ぜなければならない。

念入りに念入りにかき混ぜなければならない。

 

と肩に力を込めて、混ぜ始めたところで、衝撃の事実が発覚した。

 

「こ、このごはん。オレンジ色してる……。」

 

な、な、な、ぬわんと。

ナムルの下に隠れているごはんがすでにオレンジ色。

完璧にコチュジャンと攪拌された状態ではないか。

 

これでは念入りにかき混ぜる必要はまるでない。

上の具だけさっくりと混ざればそれでよいのだ。

 

ビビンバにおける食前の厳粛な儀式。

極めて簡略化された異常事態のスタートである。

  かき混ぜた後のビビンバ。

 

驚愕、そして動揺。

うろたえたまま、ビビンバを口に運ぶ。

 

「うん? ちょっと味が薄いか……?」

 

コチュジャンの辛さが感じられない。

普通のビビンバに比べて、どこかおとなしい印象である。

 

だが、食べ進むうちに、じんわりと味がわかってきた。

 

「あ、そうか。素材を味わう料理なんだ。」

 

種類豊富なナムル。肉汁たっぷりの牛肉。のってりした卵黄。

ダシ汁を吸い込んだシイタケ、シャキシャキとした生野菜。

それぞれの具が実に味わい深くておいしい。

具のレベルが際だって高いことに気付いた。

 

そして何よりも、ごはんがうまい。

ごはんそのものから旨味がどんどん染み出してくる。

噛めば噛むほど、味がじわじわと口に広がっていくのだ。

 

なるほど。わかった。

これはコチュジャンの辛さでごまかす必要がない。

薄味を基本としても、充分に満足できる味なのである。

逆に濃い味付けは素材のよさを殺すだけだろう。

 

そうして考えると、ごはんがオレンジ色なのも頷けることだった。

このオレンジ色ごはんには重大な秘密が隠されている。

 

ビビンバとはかき混ぜて食べる料理であるが、

実はその一方であまりかき混ぜてはいけないという議論がある。

スプーンで丹念に混ぜることで、米粒を壊してしまうという理由からだ。

 

店によっては米粒を壊さないために、箸で混ぜることをすすめるところもある。

オレンジ色のごはんは米粒を壊さない、最大限の工夫なのであろう。

 

ビビンバとは韓国語で混ぜごはんの意。

にもかかわらず、このビビンバは混ぜることを拒否している。

 

「うーん、このビビンバはすごい……。」

 

食べるほどに、感心する。

不思議なビビンバであった。

 

全州で食べた本場のビビンバ。

ソウルで食べるビビンバとは次元の違う料理であった。

素材ひとつまで気を配り、極みの地位までたたき上げた料理。

料理の根本すらも、味のためにかなぐり捨てた料理。

 

それはどこまでも贅沢な料理であった。

 

 

ビビンバは確かにおいしい料理だった。

そして充分に食べる価値のある料理だとわかった。

これで韓国を代表する料理だと認めることができる。

 

ビビンバの旨さを追求し、鍛えあげた全州という町に、

八田氏は素直に敬服したいと思う。

 

<おまけ>

全州のすべてのビビンバが同じというわけではありません。ごはんがオレンジ色になって

いるのは3店回ったうちのひとつだけでした。石焼きビビンバも他店にはきちんとありま

す。今回取り上げた店は、市街地にある有名店のひとつ、盛味堂というところです。他に

韓国家、中央会館の2店でビビンバを食べました。家族会館という店にも行きたかったの

ですが、旧正月の連休で閉まっていました。また次の機会を待とうと思います。

 

<おまけ2>

 

全州名物、コンナムルクッパプ。モヤシスープにごはんが入っている。

 

<お知らせ>

全州ビビンバの写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<八田氏の独り言>

ババンババンバンバン、

はあービビンバノンノ……。

 

コリアうめーや!!第47号

2003年2月15日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

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