コリアうめーや!!メルマガバックナンバー

 

コリアうめーや!!第37号

 

<ごあいさつ>

9月15日です。

いよいよ秋も本格的になってまいりました。

風が冷たくなって、熱燗が恋しくなる季節です。

枯葉散り、木枯らしに凍える冬もそう遠くないのかもしれません。

今週末から韓国は秋夕(チュソク)の連休です。

秋夕とは韓国のお盆のこと。

祭祀用の食材を買いに行ったり、

田舎に帰るチケットを買い求めたり。

ちょうど日本の年末にも似た慌しい雰囲気でしょう。

今年は日曜日と重なって秋夕連休が例年よりも短いとか。

そのため道路は激しい混雑が予想されるそうです。

韓国のみなさん。がんばってください。

さて、コリアうめーや!!第37号ですが、

前号に引き続いての釜山特集です。

ソウルの常識が通じない驚きの土地釜山。

ワンダーランドへスタートです。

 

 

<タマゴはどこへ消えた?>

  

(左)釜山のカンチャジャン。右の炸醤をかけて食べる。

(中)麺の上に半熟の目玉焼きが乗っている。

(右)釜山のスンドゥブチゲ。

 

  

(左)いくら探しても卵は入っていない。

(中)釜山のスンデ。右下の味噌をつけて食べる。

(右)釜山ではホットクを黒砂糖につけて食べる。

 

 

「た、た、た、卵がないですよ!!」

「ええ、釜山では卵は入らないんです。」

「卵が入らないですって?そんなバカな!!」

 

愕然。そして呆然。

 

八田氏は崩れ落ちるように両膝をつき、

肩を落とし、がっくりとうなだれ、深く嘆息した。

顔は半泣き。意識ははるか外宇宙までぶっとんでいる。

 

「た、た、た、卵が入らないなんて……。」

「釜山ではスンドゥブチゲに卵が入らないのが常識なんです……。」

 

正面の男は残念そうに言った。

釜山ではスンドゥブチゲに卵が入らないのが常識。

なんたる無情の土地であるか、釜山……。

 

八田氏といえば無類のスンドゥブチゲ好きで知られる。

コリアうめーや!!第22号でもスンドゥブチゲを取り上げ、

日本に住みつつ、最も懐かしく恋焦がれる料理こそがスンドゥブチゲだと述べている。

 

スンドゥブチゲとは押し固める前の柔らかな豆腐を入れた鍋のこと。

グツグツの鍋でフルフルとふるえる豆腐。唐辛子たっぷりの濃厚な辛さ。

そして、スンドゥブチゲには卵が絶対的に欠かせない。

 

半熟で出てくる卵をどうやって食べようか。

 

突き崩し、かき玉状態にして食べようか。

いったんそのままにして食べ始め、ほどよいところで具として食べようか。

すばやく卵をすくい出し、ごはんにのせて卵ごはんにして食べようか。

 

悩みながら、その日の気分に合わせて選択をする。

それこそスンドゥブチゲの魅力であり、喜びである。

 

だのに。

 

釜山ではスンドゥブチゲに卵が入らない。

それじゃあスンドゥブチゲを食べる意味がないじゃないか!!

 

ドンガラガッチャーン!!(ちゃぶ台ひっくり返しました。)

 

 

かつて、これと全く同じ衝撃を受けたことがある。

ソウルのとある食堂に、友人と2人で昼ごはんを食べに行った。

八田氏はスンドゥブチゲを頼み、友人は石焼きビビンバを頼んだ。

確かスンドゥブチゲが2500ウォン。石焼きビビンバは3000ウォン。

値段からみても、学生向けの安い店だった。(1000ウォン=約100円)

 

八田氏のスンドゥブチゲが先にきた。

沸騰する鍋にスプーンを突っ込み、卵の固まり具合をチェックする。

突き崩して食べようかな。ごはんに乗せようかな。

 

ところが。

なんとこの店のスンドゥブチゲには卵が入っていなかったのだ。

 

いや、厳密に言えば少し入っていた。

少しという表現が微妙だが、卵の白身部分だけが入っていた。

真っ白なかき玉状態。淡雪のような白身の固まりがフワフワと浮いている。

 

だが白身ばかりで黄身が見当たらない。

豆腐の下にもぐりこんだかと、入念にほじくったけど見つからない。

おかしいな。どうしたのかな。白身だけじゃ意味ないからな。

突き崩せないし、卵ごはんにも出来ないしな。

 

と思っていると、ふとあることに気がついた。

少し遅れて登場した友人の石焼きビビンバ。

牛肉やナムルがきれいに盛りつけられ、その中央に卵黄が乗せられている。

 

卵黄?

 

 

八田氏のスンドゥブチゲにはフワフワの白身。

友人の石焼きビビンバにはプリプリの黄身。

 

こ、これは合わせてひとつの卵ではないのか?

 

 

憤慨した八田氏は毅然として言いましたね。

 

「キミね。キミのキミだけど、それキミのキミじゃなく僕のキミだと思うんだけど。」

「はあっ、お前なに言ってるの?」

 

「いやだからキミね。キミのキミがね。キミのキミでなくて僕のキミであってキミのキミ

でなくてね。僕のキミだからつまりキミね。キミのところにはキミがあるけど僕のキミが

キミのところに行ったキミであってキミのキミではないからキミのキミを僕のところにだ

ね。キミをつまりキミのキミ、俺のキミを返せえ!!」

 

ドンガラガッチャーン!!(テーブルひっくり返しました。)

 

 

今思い返しても不幸な事件だった。

 

 

スンドゥブチゲの卵(黄身)は石焼きビビンバに移動していた。

ならば釜山でもスンドゥブの卵はどこかに移動しているのかもしれない。

そう考えた八田氏は即座に卵捜索隊を結成し、釜山中を駆け巡った。

 

果して。消えたスンドゥブの卵は別の料理に移動していた。

 

その料理の名はカンチャジャン。

 

韓国を代表する中華料理にチャジャンミョンというものがある。

漢字で書くと炸醤麺。日本ではジャージャーメンと呼ばれている。

豚肉、タマネギなどを春醤という黒い味噌と一緒に炒め、麺の上に乗せた料理だ。

炒める際に水溶き片栗粉を入れず、トロミをつけないものを特にカンチャジャンと呼ぶ。

 

このカンチャジャンになんと卵が乗っていた。

 

カンチャジャンは麺と醤が別々になっていることが多いが、

その麺の皿に目玉焼きが乗っているではないか。

 

麺の上に半熟の目玉焼き。

こんなのソウルでは見たことがない。

 

聞けば釜山ではごくごく普通のことだそうな。

スンドゥブには卵がなく、カンチャジャンには卵を乗せる。

それが釜山の常識だった。

 

食べてみるとカンチャジャンと卵の相性もなかなかだった。

こってりとした味噌の味に卵が混ざって旨みを倍化させる。

そこに麺が絡むのだから、これは重層的なハーモニーとなる。

ソースに卵、ヤキソバという広島風お好み焼きの力強さにどこか似ている。

 

これはこれで非常に満足のゆく味だった。

 

 

かくして八田氏は釜山でも卵を見つけた。

スンドゥブチゲからは卵が消えてしまったが、カンチャジャンで卵を見つけた。

失われた卵はカンチャジャンという倉庫にあったのである。

 

今回発見したこの偉大なる成果を……。

2匹のネズミと2人の小人にも、ぜひ教えてあげたい。

 

 

<おまけ>

今回釜山に行って感じたことがあります。同じ韓国料理とは言え、地方に行けばまったく

姿形が異なるということ。「ソウルでの常識=韓国の常識」ではないということを改めて

痛感しました。ソウルでは粗塩をつけて食べるスンデ(豚の腸にもち米や春雨・豚の血な

どを入れ茹でたもの)を、釜山では味噌につけて食べます。またソウルではそのまま食べ

るホットク(小麦粉をこね中に砂糖または餡を入れ平たく焼いたもの)を、釜山では黒砂

糖につけて食べます。細かな違いですが、確かに違う食文化が釜山にはありました。ソウ

ルにしか住んだことのない八田氏にとって、釜山は驚異の食文化を持つ土地でした。

 

<お知らせ>

釜山独特の食べ方をする料理の写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<お知らせ2>

プサンナビというサイトで市場探検の記事を書きました。

八田氏が釜山のチャガルチ市場を語っています。

http://www.pusannavi.com/communi/rp_list.php?id=6

 

<八田氏の独り言>

『タマゴはどこへ消えた?』の執筆を検討中です。

教訓をきっちりと込め、少なくともバターは追い越したいです。

 

コリアうめーや!!第37号

2002年9月15日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

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