コリアうめーや!!メルマガバックナンバー

 

コリアうめーや!!第36号

 

<ごあいさつ>

9月になりました。

残暑はまだまだ厳しいですが、

ほどなく秋の雰囲気へと変わっていくことでしょう。

サンマくんやキノコさんにご挨拶をしなければなりません。

果物さんや新米くんとも仲良くしたいと思います。

マツタケ大先生とはお会いできるかなあ……。

食欲の秋とはよくいったもので、

秋と聞いただけで秋の味覚の数々が、頭の中を駆け巡ります。

さて、八田氏ですが、また10日間ほど韓国に行ってきました。

今回は韓国第2の都市、釜山を中心とした日程。

港町として栄えた釜山のうまいもの探しです。

4月に済州島に出かけたときと同様、

早速メルマガでも釜山のうまいものを紹介してみたいと思います。

コリアうめーや!!第36号。

ソウルとはまた違った食文化を持つ町から、

潮風に乗る汽笛をバックにスタートです。

 

 

<釜山で食べろテジクッパプ!!>

  

(左)釜山の名物料理テジクッパプ。

(中)テジクッパプには豚肉の薄切りが具として入り、下にはごはんが沈んでいる。

(右)ごはんとスープが別々に出てくるタロクッパプ。

 

  

(左)ごはんを別にし、さらに豚肉の薄切りも別皿に盛ったスユクペッパン。

(中)テジクッパプ屋の店頭では大きな釜でスープを煮込んでいる。

(右)スープの中からひもで縛ったコチュが顔をのぞかせる。

 

「兄ちゃん、サバ買ってきな。安くしとっから!!」

「刺身食べてきなさい。刺身。ヒラメにアワビ。どう?」

「ほおら新鮮なタチウオだ。たった1万ウォン!!」

 

釜山の市場をふらふら歩いていると、あちこちから声をかけられる。

真っ黒に日焼けしたおじちゃんやおばちゃん。

手招きする前にはたくさんの魚がならべられている。

 

サバ、タチウオ、ヒラメ、イシモチ、タイ、エイ、サメ、クジラ。

ズワイガニ、スルメイカ、ウニ、アワビ、ヌタウナギ、ユムシ。

そう、釜山は港町。海の町。魚介類の豊富な町だ。

 

 

と、ここまで書いておいて実は今回のテーマは豚肉である。

 

港町だからといって魚介類しか食べないわけではない。

ちょっと天邪鬼的に、豚肉料理などを紹介してみる。

 

筆者が読者に向ける、なんの意味もない地味なフェイント。

八田氏だけがほくそ笑む、1人時間差攻撃である。

 

 

さて、港町釜山には特別な豚肉料理がある。

ソウルでは食べられない、釜山でしか食べられないご当地料理だ。

 

その名もテジクッパプ。

 

テジクッパプは豚肉のスープにごはんを入れた料理。

さまざまな部位の豚肉を長時間煮込み、旨みの染み出たスープにごはんを入れる。

 

決して上品な部類の料理ではないが、これがまた乱暴にうまい。

スープにつかったごはんをスプーンでざくざく食べる。

エネルギッシュでダイナミックな料理だ。

 

八田氏が初めてテジクッパプを食べたのは5年前。

下関から釜山に渡るフェリーで出会った韓国人に案内してもらった。

そのときは、そこまでうまい料理とは思わなかったが、

これが釜山を代表する料理だと語ってくれた彼の表情は印象に残った。

 

 

そんなテジクッパプの話を、ソウルの友人にしたことがある。

 

「テジクッパプって料理を食べたんだ。」

「テジクッパプ?そんな料理はないよ。」

「え、ほんとに?」

「テジクッパプじゃなくてテジトッパプだろ。」

「テジトッパプ……。」

 

トッパプというのはごはんの上になにかをのっけた料理。

汁にごはんをぶちこんだクッパプとはまったく違う。

 

この会話を交わした頃はまだ韓国語がつたなく、単純に自分の覚え違いだと思った。

トッパプと覚えるところを一文字間違え、クッパプと覚えてしまった。

そう思って素直に自分の間違いを認めたのだった。

 

だが。

 

八田氏は間違っていなかった。

今回釜山に行って、真っ先に確認した。

確かにクッパプだった。トッパプではない。

ソウルにはなくとも、釜山にはテジクッパプという料理があるのだ。

どうだ、ざまあみろ。わあっはっは。

 

 

その思い出のテジクッパプを5年ぶりに食べてみた。

 

テジクッパプ屋の店先には大きな釜が置かれている。

もうもうと湯気がたちのぼるその間から、ひょいと大釜の中をのぞいてみると、

乳白色の液体が大きなあぶくをたてて、ぐつぐつ暴れていた。

 

「じっくり煮込んでますよお」と、スープが笑っているようだ。

 

瞬間的に鼻をつくケモノ感たっぷりの豚肉臭。

牛を煮込んだときとは、また一味違う独特の香りがする。

脂の塊が、度を過ぎて大量に溶け出したような香りだ。

 

途端に笑顔のスープが中年オヤジの顔に見えてくる。

オデコやハナのあたりがギラギラする、ニカっとした笑顔だ。

 

 

「テジクッパプをひとつ。」

 

店に入ってテジクッパプを注文する。

すでにスープが煮込まれているため、待ち時間は少ない。

店内をキョロキョロ見回しているうちに、テジクッパプの黒い器がやってきた。

 

白いスープの上に刻みネギがちりばめられている。

薄切りにした豚肉が具として入り、ごはんは下に沈んでいるのか見えない。

先ほどギラギラの笑顔を見ているだけに、どうしても脂の味を想像してしまう。

スプーンを手に取り、おもむろにスープを一口すする。

 

「ありゃ?意外とさっぱりしてるじゃない。」

 

豚肉特有のしつこさ、コテコテ感はほとんどない。

上質の豚骨スープを思い浮かべてもらうといいかもしれない。

濃厚な味ではあるものの、決して嫌な濃さではない。

 

これは醤油ダレに注いだら、絶品のとんこつラーメンができるだろうなあ。

そんな味。味付けは薄く、ただ豚肉の旨みだけを上手に取り出したような味だ。

 

塩味はほとんど感じない程度にしかつけられていないので、

粗塩やアミの塩辛、 タデギ(唐辛子ベースの合わせ調味料)などで好みに味をつける。

 

「ニラを入れるともっとおいしいよ」と店のおばちゃんが言う。

さっそくニラもドサドサ入れてみる。

 

色々入れながら塩分の調節をはかるのだが、個人的には薄味を基本としたい。

この手のスープ料理は塩味に染めてしまうと、肉の旨みが隠れてもったいない。

肉の旨みを味わうだけの塩加減。この度合いがおいしく食べる秘訣だ。

 

スプーンをさらに突っ込むとごはんが顔を出す。

汁気を吸って一回りふくれたごはんをスープとともにすくって食べる。

ずるずる、ざくざく、すくって食べる。

 

豚の香り、肉の旨み、そしてちょっとだけ米の甘み。

なるほど。これはうまい。

 

 

あっという間に食べ終わり、汗をぬぐいながら店を出た。

入口の外にある、ぐつぐつの大釜をもう1度のぞいてみる。

 

店のおばちゃんがおおきなひしゃくで熱心にスープをかきまわしている。

 

「とってもうまかったですよ。」と声をかけると、

「じっくり煮込んでいるからねえ」と返ってきた。

 

おばちゃんはそう言いながら釜の奥からなにかをかき出して見せてくれた。

 

じっくり煮込んでいるという豚骨。そして肉や内臓。

ひしゃくを沈めるたびに、さまざまな部位が釜から顔を出す。

 

次に細長いものがひもでくくられて出てきた。

 

「おばちゃん、それはどこの部分?」

「これかい? ははは。コチュだよ。」

 

コチュ。

 

韓国語では唐辛子のこと。

そして……。

 

男性の股間にあるアレを意味する。

 

 

<おまけ>

テジクッパプ屋のメニューにはタロクッパプというものがあります。これはごはんをスー

プの中に入れた状態ではなく、別々の器に入れたもの。ごはんをごはんとして食べたい人

はこちらがオススメです。さらに具である豚の薄切りも器の外に取り出すと、スユクペッ

パンという名前になります。好みにあわせていろいろな形で楽しめるのがテジクッパプの

魅力でもあります。

 

<おまけ2>

釜山のテジクッパプと書きましたが、南部地方の料理であり釜山以外でも見られます。釜

山にあってソウルにないテジクッパプ。どこまでがテジクッパプ文化圏なのか。一度調べ

てみたいものです。

 

<お知らせ>

テジクッパプの写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<八田氏の独り言>

テジクッパプの具には首肉などの上質な部分だけが使われるそうです。

コチュじゃなくて本当によかった。

 

コリアうめーや!!第36号

2002年9月1日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

 

<戻る>