コリアうめーや!!メルマガバックナンバー
コリアうめーや!!第120号
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<ごあいさつ> 3月になりました。 そろそろ春の訪れも感じられる頃です。 花粉症や黄砂の心配もある季節ですが、 どこか心の底がウキウキするのもまた事実。 まだまだ寒い日が続くだけに、 春のポカポカ陽気が待ち遠しいですよね。 春よ来い。早く来い。 さて、今号のコリアうめーや!!ですが、 第120号を迎えたということで、 かつて、第60号でやった企画を再現してみます。 きっともう覚えている人もいないと思いますが、 韓国料理をテーマにしたほのぼのフィクション物語。 第60号では「ビビンバくんの冒険」と題し、 彼が美味しくなるまでのストーリーを書きました。 これの第2弾をやってみたいと思います。 長く続けられているからこその節目企画。 読者皆様に心より感謝を申し上げます。 コリアうめーや!!第120号。 物語の世界へと、スタートです。 |
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<サンチュとエゴマの葉の物語!!> むかしむかしのお話です。 韓国の野菜たちが、まだ心を持っていた頃。 彼らの暮らす村では、日々自慢合戦が行われていました。 中でもいちばん元気のよかったのが、 トウガラシ、ニンニク、ネギの3人組。 それぞれ韓国料理に欠かせない野菜として、 我こそがいちばん! と主張していました。 「韓国料理は辛さが命。オイラがいないと成り立たないね!」 トウガラシが胸を張りながら言うと、 それと張り合うようにニンニクとネギも、 「いやいや韓国料理は香りだよ。パワフルな香りの僕がいないと!」 「味の調和を忘れないでもらいたいね。ネギこそが大事なんだ!」 と譲りません。 3人はそれぞれ自分の優秀さを自慢しあい、 それは他の野菜が止めに入るまで延々と続きました。 「まあまあキミたち、そのへんにしておきなよ。 キミら3人がいるから僕らもキムチとして活躍できるんだ」 止めに入った白菜の横で、大根とキュウリがうんうんと頷きます。 そうするとトウガラシ、ニンニク、ネギの3人組も、 満足したかのように笑いあい、すぐに仲直りをするのです。 野菜たちの間で繰り返される、決まりごとのようなやり取りでした。 そんな3人の自慢合戦は微笑ましいものでしたが、 野菜村の中には、もっともっと深刻な問題がありました。 それはサンチュとエゴマの葉の仲が悪いこと。 トウガラシたちは自分の魅力を主張しつつも、 それぞれが互いの実力を認めあっていました。 だからこそ意地を張ることがあっても仲直りが早く、 働くときは一致団結して、よい仕事ができたのです。 でも、サンチュとエゴマの葉は違います。 互いが互いのことを激しくライバル視し、 絶対に自分のほうが格上の野菜だと譲りません。 心配したまわりの野菜たちが仲裁に入ってもダメ。 ただひたすら頑固にいがみあっているばかりでした。 |
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サンチュとエゴマの葉はいつも仲たがいばかり。 |
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例えばある日の言い争いはこんな理由からでした。 「韓国料理といえばキムチなのに、お前はキムチにならないのな」 エゴマの葉がそう言ってサンチュのことを笑いました。 確かにサンチュは水気が多く、長期の保存、発酵には向きません。 エゴマの葉のキムチはあっても、サンチュのキムチは見かけません。 「オレ様なんかキムチだけじゃなく、チャンアチにもなるんだぜ。 軟弱な誰かさんと違って、ごはんのお供にピッタシなんだ!」 チャンアチは野菜を醤油漬けにした料理。 大根、ナス、ニンニクなどもチャンアチとして活躍していますが、 エゴマの葉のチャンアチは韓国でも特に人気の副菜です。 しかし、サンチュも言われたままではありません。 「キムチにこそならないが、私はコッチョリとして食卓で活躍している。 私の瑞々しい食感が、食べる人にさらなる食欲を促すのだ。 ゴワゴワガサガサしたキミには、到底できない芸当だな」 コッチョリは浅漬けにしたキムチのこと。 薬味、調味料と混ぜ合わせてすぐ食べるので、 生野菜をサラダのようにさっぱりと味わえます。 これに対しエゴマの葉がさらに言い返します。 「ふん、オレ様は鍋料理にだってたくさん使われているんだ! お前さんは鍋なんかに入ったら、ドロドロになっちまうだろ!」 エゴマの葉は独特の強い香りを持っているので、 ちょっとクセのある料理に、臭い消しとして使われます。 豚の背骨とジャガイモを煮込んだカムジャタン、 犬肉を煮込んだポシンタンなどが、代表的なところでしょう。 「何を偉そうに。確かに私は鍋料理との付き合いこそないが、 ビビンバやフェトッパプ(刺身丼)とは懇意にしている!」 フェトッパプは刺身丼といっても、日本の鉄火丼などとは異なり、 生野菜がたっぷり入る、刺身ビビンバとも言うべき料理です。 さっぱりとしたサンチュはフェトッパプに欠かせない野菜。 ビビンバにもちぎったサンチュを入れることが少なくありません。 こうした言い争いは、始まると日が暮れるまで延々続き、 果ては、やれエゴマの葉は抗ガン効果に秀でているから偉いだの、 サンチュには眠気を誘発する成分が含まれていて疲労回復によいだの、 どちらがどちらとも言えない、議論に終始するのです。 そんな2人に、他の野菜たちはほとほと手を焼いておりました。 |
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上の写真はエゴマの葉のチャンアチ(左)とサンチュコッチョリ(右)。下の写真はエゴマの葉がたっぷり入るポシンタン(左)と、ちぎったサンチュの入るビビンバ(右)。 |
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そんなある日のこと。 野菜村に思わぬ事件が起こりました。 野菜たちの協力を求め、隣村から牛肉がやってきたのです。 「実は野菜村のみなさんにお願いがあってやって来ました。 このほど、我々は『焼肉』という新しい料理を開発したのですが、 どうも我々の力だけでは、思い通りの味にならないのです。 野菜村のみなさんにも協力してもらえないかと思いまして……」 牛肉が言うには、焼肉という料理はたいへん美味しいものの、 脂っこさがやや前面に出過ぎ、いまひとつ食べにくいとのことでした。 どうやら野菜との調和で、新たな味を模索したいようです。 さっそく野菜たちの間で会議が開かれました。 もちろん、味に全力を尽くす野菜たちにとっても、 牛肉の提案は異論のある話ではありません。 喜んで協力する、ということで話がまとまりました。 さっそくどの野菜と相性がよいのか実験が始まります。 それぞれの野菜が自らの個性を発揮しつつ、 焼肉という新料理と真剣に向き合った結果……。 なんと、最後に残ったのはサンチュとエゴマの葉でした。 普段から仲の悪い2人ですが、意外な共通点がありました。 それは2人とも、手のひら状に大きな葉野菜だということ。 脂気の強い牛肉を、すっぽりと包み込むことができたのです。 白菜、ケール、チコリなども同じような特徴を持っていましたが、 サンチュ、エゴマの葉ほど、うまくは活躍できません。 この勝負は、サンチュとエゴマの葉のどちらかしかない。 最終判定に2人が残ったとわかったとき、 2人が見せたライバル心は、これまでになく激しいものでした。 「他の誰に負けようとも、こいつだけには負けたくない」 目から火花がバチバチと散り、背景には龍虎の絵が浮かびます。 まさに因縁の対決。周囲の野菜たちも、 固唾を飲んで、最終判定の行方を見守りました。 |
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隣村で開発された新料理の焼肉。どうしたら美味しく食べられるか……。 |
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牛肉を中心にして、長い長い判定会議が行われました。 どうやら、判定人の間でも意見が割れているようです。 待てども、待てども、結果は出てきません。 参加者全員が、もう待ちくたびれてしまったという頃、 やっとのことで牛肉が再び現れて言いました。 「長い間話し合いましたが、結論は出ませんでした……」 予想外の結果に、周囲がどよめきます。 「最後まで残った2人にはどちらにも魅力がありました。 サンチュ氏は身体が大きく、我々牛肉をゆったり包んでくれる。 対してエゴマの葉氏は身体こそサンチュ氏に比べて小さいものの、 独特の香りで我々の持ち味を引き立ててくれました」 どちらも甲乙つけがたく、どちらかを選ぶことはできない。 判定人たちは一様に難しい顔をしており、 それが苦渋の選択であることは、容易にうかがえました。 当事者であるサンチュとエゴマの葉はもちろん、 周囲の野菜たちも、すっきりしない状況に困り顔です。 その場にいる全員が、困り果て黙り込んでしまいました。 すると、そのときです。 ひとりの野菜が大きな声をあげて言いました。 「そうだ! 2人とも魅力的なら2人が協力したらどうだろう!」 発言したのは、いつも元気な3人組のトウガラシでした。 そして、その提案にピンときたかのごとく、 ニンニクとネギも大きな声で続きます。 「2人とも葉野菜なんだから重なればいいじゃないか!」 「2人で包めばいいんだよ、僕たちも協力するよ!」 そう言ったかと思うと、3人組は戸惑うみんなを横目に、 それぞれが素早く、姿を変え始めました。 トウガラシは小口切りに、ニンニクはスライスに、 ネギは皮の部分だけをはいで、細い細い千切りになります。 そして、すべての準備が整い……。 「さあ、僕らを一緒に包んでくれ!」 3人組の勢いに押され、サンチュとエゴマの葉が合体します。 中には、牛肉、トウガラシ、ニンニク、ネギ、そして少量の味噌が加わり、 ぐるっと大きく包み込んだところで、ガブリ、ムシャムシャ! 「こ、これだぁっ!」 包まれた牛肉から、歓喜の声があがりました。 牛肉の脂っこさを、それぞれの野菜が抑えつつ、 サンチュが食べやすく包み、エゴマの葉が独特の風味を加えます。 そして野菜の間からは、うまみたっぷりの牛肉が登場。 新料理、焼肉のもっとも美味しい食べ方が、 この世界に誕生した瞬間でした。 |
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やっぱり包んで食べるのがいちばん! |
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これをきっかけにサンチュとエゴマの葉は互いを認め合い、 「包む」という仕事を、2人協力して行うようになりました。 やがては牛肉のみならず、豚肉や鶏肉、 刺身やごはんなども包んで食べる料理が誕生。 2人の共同作業は、韓国料理に欠かせないものになったのです。 韓国料理は包んで食べるとさらに美味しい。 他の野菜では絶対に真似ることのできない、 2人のチームワークは、今も多くの人に愛されています。 めでたし、めでたし。 |
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<おまけ> 念の為に書いておきますが、この話はフィクションであり韓国料理の歴史などとは一切関係がありません。話の内容はできるだけ事実に即した形で書いてありますが、物語性を優先させているので、事実と異なる部分も多少あります。例えば、実際に見ることはほとんどないはずですが、サンチュのキムチなども専門書には掲載されています。細部の矛盾を発見された場合は、物語上のことと広い心で見逃して頂ければ幸いです。 |
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<お知らせ> サンチュとエゴマの葉の写真がホームページで見られます。 よかったらのぞいてみてください。 |
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<お知らせ2> 今年から新たにブログを始めました。 日々食べている韓国料理の記録を残しています。 |
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<八田氏の独り言> 節目の物語企画。次があるとすれば第180号ですが、 2008年の秋で、北京五輪よりも先の話です。 |
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コリアうめーや!!第120号 2006年3月1日 発行人 八田 靖史 hachimax@hotmail.com |
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