コリアうめーや!!メルマガバックナンバー

コリアうめーや!!第105号

 

 

<ごあいさつ>

7月15日になりました。

日本では特になんでもない金曜日ですが、

韓国ではちょっと特別なイベントデーです。

今日は第104号で紹介した伏日の初日。

日本でいう土用の丑の日のように、

スタミナ料理を食べる日です。

美味しいものを食べて、栄養もつけて。

これからやってくる暑い夏も、

元気一杯で乗り切っていきたいですね。

さて、今号のコリアうめーや!!ですが、

7月3日から6日までソウルに行って来ました。

期間は短くとも、かなり濃密な4日間でしたので、

そこで食べた料理の報告をしたいと思います。

第1弾はこれぞ韓国料理という一品。

コリアうめーや!!第105号。

新料理に期待を寄せる、スタートです。

 

<キムチが生み出す新たな魅力!!>

今年5月に韓国から友人が遊びに来たときの話。

宴会の途中で友人が思い出したように言った。

 

「あ、そうだ。最近また新しい料理が流行ってるよ」

「えっ! なになになに! どんなの!?」

 

この瞬間、どんなに酔っ払っていても、僕の身体はダンボになる。

いや、間違った。身体がダンボになってどうする。僕の「耳が」ダンボになる。

身体のダンボ化はあながち間違いではないが、まだそこまで深刻ではない。

 

「キムチチムって言って、最近テレビとかにも出てるみたい」

「ほー、キムチチム……。で、それはどんな料理?」

「うーん。あたしもまだ食べたことがないからなあ」

 

「どこに行ったら食べられるの?」

「なんか西大門(ソデムン)のほうに有名な店があるらしいよ」

「そっか。じゃ、後で調べてみる。本当に助かるよ。ありがとう」

 

ダンボ化した耳を餃子サイズに戻し、必要事項をメモ。

日本にいる僕にとって、韓国の最新事情は本当にありがたい。

 

「新しい料理が出てきた!」

「今はこの料理が注目を浴びている!」

「新しく出来たあの店は美味しい!」

 

どんなにアンテナを高くしても、現地の様子はなかなか伝わらない。

韓国から来る友人の現地情報は、僕にとって救援物資にも等しい。

 

「よおし! 次のソウルはキムチチムがメインだな!」

 

僕はそう心に決め、次のソウル行きを待った。

 

 

目指す料理が決まった後、次に重要なのは黙っていることである。

 

僕の性格上、珍しい情報を仕入れると、

ついついあちこちで披露してしまいたくなる。

 

「へー、そんな料理があるんだ。やっぱり情報速いね!」

 

なんて言われた日には、鼻が伸びて伸びて仕方がない。

だが、この心地よさは、あくまでも一時のもので両刃の剣。

 

「じゃあ、来週行くからついでに食べてくるよ」

 

と、先を越されてしまったりする。

得意気にしゃべった自分のせいではあるが、

これはなんとも悔しい。どころか、

 

「食べてきたけど、イマイチだった」

 

なんて言われようものなら、その時点で新ネタは瞬殺。

ハンカチの端っこを漫画のように噛みしめて悔しがるしかない。

 

狙ったネタは時が来るまで、じっと寝かせておくのが鉄則。

キムチチムもぐっとこらえて7月まで黙り通した。

 

 

 

キムチチムのほかに夏メニューの制覇も目標のひとつに掲げた。左上から右下にサムゲタン、冷麺、パッピンス、ヨーグルトアイス。

 

旅行のメインにキムチチムを据えたので

気持ちを入れて、到着初日から食べに行くことにした。

ソウルに住む友人と食事の約束をしていたので電話をかける。

 

「ども、八田です。今到着しました!」

「お、来たね。今夜はどこでごはん食べる?」

「うん。色々考えたんだけど、最近人気だっていうキムチチムはどう?」

 

この時点で僕が期待した答えは2つ。

 

「あー、はいはい。キムチチムね」という同意の答え。

「え!? それってどんな料理?」という驚きの答え。

 

だが、帰ってきたセリフはそのどちらでもなかった。

 

 

「キムチチム? もうだいぶ流行がすぎたよ」

「えっ……!」

 

 

脳天をハリセンでひっぱたかれたような衝撃。

耐えに耐えた2ヶ月が、一瞬で砕け散った。

 

「ま、流行が過ぎてもなくなる料理じゃないからキムチチムにしとく?」

「う、うん。とりあえずキムチチムで……」

 

やっと声を振り絞ったときには、この新料理開拓企画が、

ただのお笑いネタ化してしまったことを確信していた……。

 

 

と、ここまで書いて、さっさと現実に戻ろう。

 

愕然とはしたものの、日本で仕入れた情報が古いのはよくあること。

キムチチムが僕にとって未知の料理であるのは事実であり、

多くの人を魅了する人気料理なのも確かだ。

 

情報の先取りをして、カッコつけようと思った僕が愚かなだけ。

 

気を取り直して、キムチチムの店に出かけることにした。

目指すのは元祖格として評判の、韓屋家(ハノッチプ)という店だ。

 

なんでも昨年末頃にテレビ、新聞などで紹介され、

一気に火がついて多くの客が押し寄せたらしい。

 

僕が訪れた日曜日の夜も、大行列こそなかったものの、

家族連れ、団体客などで店内はぎっしりいっぱいだった。

店員のおばちゃんたちも、せわしげに店内を駆け回っている。

 

熱気があり、活気のある店。

 

こういう店は入ったと同時にアタリだとわかる。

 

 

西大門駅から徒歩1〜2分ほどのところにある韓屋家。

 

席に座ってキムチチム1人前とキムチチゲを1人前注文。

 

最初、キムチチムだけを2人前頼もうとしたら、

店のおばちゃんにキムチチゲも食べるようにすすめられた。

2枚看板の両方を、1人前ずつ注文するのが一般的らしい。

 

両方食べられるのは、客の立場としても大歓迎。

 

期待をさらに大きくさせて料理を待つ。

ビールで乾杯をし、くいーっとグラスの1杯を飲み干したところで、

メイン料理の2品がバタバタと慌しくやってきた。

 

「はいー、おまたせー!」

 

卓上のコンロにキムチチゲの鍋が乗せられ、

ついで、キムチチムの平皿がテーブルにトンと置かれた。

目の前の友人が嬉しそうに声を弾ませる。

 

「このボリュームで1人前っていうのがいいよね!」

 

白菜キムチはスーパーで売っている4分の1カットサイズほど。

食べやすい大きさに切られてはおらず、芯から葉先までがつながっている。

熱を帯びてトロトロとしており、見た目いい感じにくたびれていた。

 

その横には豚肉の塊がゴロン、ゴロン、ゴロンと3個。

キムチと一緒に煮込んであり、1個のサイズが子供のゲンコツくらいある。

 

キムチチムの「チム」は、少量の煮汁で蒸し煮にする料理法。

煮物ほど汁気がないので、旨みをスープに流すことがない。

効率的に火を通し、旨みを活性化させる賢い調理法だ。

 

 

キムチチム(左)とキムチチゲ(右)。酸味のきいたキムチの味がたまらない。

左の写真はクリックで拡大可。 拡大

 

「この料理は食べ方が大事なんだよ」

 

友人が箸を取って実際にやってみせてくれた。

どうやら次のような手順で食べるのが正しいらしい。

 

1、キムチを根元から葉先までつながった状態で1枚はがす

2、塊の豚肉を食べやすい大きさに切る(箸で簡単に切れる)

3、キムチで豚肉をくるっと巻く

4、食べてあまりのうまさに大騒ぎする

 

なるほど、と至極納得し自分でも試してみる。

キムチを1枚はがし、豚肉を巻き、大口あけてバクッ。

 

「じゅわじゅわじゅわじゅわっ!」

 

びっくりした。噛みしめたその瞬間。

酸味のきいたジュースがどばっとあふれ、口の中が大洪水。

キムチの汁による、嬉しい不意打ちだった。

 

「んんんん、んまっ!」

 

思わず声にならない声が飛び出した。

噛みしめていくにつれて、豚肉の存在感が増してくるのもいい。

酸味のきいたキムチと豚肉の相性は最高。

 

そしてこの組み合わせが、ごはんとたまらなく合うのだ!

 

 

「これはごはんをバクバクいけるね!」

 

 

と興奮しかけたところで、友人がさらに一言。

 

「そこに韓国海苔をはさむとさらに美味しいよ」

「な、なるほど!」

 

見れば、目の前にパリパリの韓国海苔が用意されている。

キムチで豚肉を巻き、それをさらに海苔で巻いてごはんと食べる。

 

ごはんに合うものばかりを集めた精鋭部隊。

 

これでまずかろうはずがない。

 

横でグツグツと煮えているチゲをすすりつつ、

キムチだ、豚肉だ、海苔だとバクバク食べているうちに、

1人前のごはんがきれいさっぱりとなくなった。

 

「ぐは、一気に食べてお腹いっぱい」

「この料理はついついごはんと食べ過ぎちゃうよねえ」

「特に酸味のきいたキムチの味が素晴らしい」

「うん、キムチがまずかったら成り立たない料理だね」

 

キムチの魅力を最大限に引き出した料理。

韓国はやはりキムチの国であると強く感じた。

 

 

箸で白菜キムチを1枚はがし、豚肉を巻いて食べる。美味。

 

ここ数年、韓国ではキムチを使った新しい料理が目立っている。

 

例えば、豚バラ肉を使った焼肉のサムギョプサル。

肉から落ちた脂でキムチを焼くスタイルは広く一般化してきた。

これもまたキムチと豚肉という王道の組み合わせである。

 

昨年あたりからは2年、3年と熟成させたキムチで作る、

酸味のきいたキムチチゲがあちこちで人気を集めている。

 

地味ではあるが、じわじわとキムチの時代が復活しているように思う。

キムチチムもそんな流れから人気を得た料理なのかもしれない。

 

今の韓国では若者、子供のキムチ離れが叫ばれている。

食が洋風化し、ピザやハンバーグが好まれていると問題視する向きもある。

 

だが、こういう料理を見ていると、

キムチ離れなどなんのそのという気持ちになってくる。

従来のキムチの枠に留まらない、

新しいキムチ料理がどんどん生まれているのだ。

 

キムチの可能性はまだまだ無限。

 

こういう料理が人気を集められる限り、

韓国料理の未来は当分明るいと僕は思う。

 

韓国の偉大なるキムチ文化に幸あれ!

 

 

サムギョプサルとキムチ(左)。2年熟成のキムチチゲ(右)

 

<おまけ>

キムチチムにこだわったため、キムチチゲの話がほとんど書けませんでした。キムチチムと同じくじっくり熟成させたキムチを使い、大きめに切った生の豚肉、豆腐、タマネギ、長ネギが入る豪華なキムチチゲです。嬉しいのはインスタントラーメンがサービスで用意されており、これを自由に加えられること。1人前5000ウォン(約500円)でお腹いっぱい食べることができるのはなんとも韓国らしい姿です。僕自身も大喜びでラーメンを投入したのですが、これって途中でかなりお腹がふくれてしまうんですよね。キムチチムもキムチチゲもごはんと大変相性のいい料理。ラーメンを入れるよりも、ごはんをもう1杯頼んだほうがよかったのではないかと今は反省しています。

 

<お知らせ>

キムチチムの写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<八田氏の独り言>

明日でホームページ開設から丸4年。

いよいよ5年目に突入いたします。

 

コリアうめーや!!第105号

2005年7月15日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

 

 

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