コリアうめーや!!メルマガバックナンバー
コリアうめーや!!第104号
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<ごあいさつ> 7月になりました。 日本各地で大雨が降ったり、渇水になったり、 両極端の奇妙な異常気象が続いているようです。 ソウルも今年はずいぶん雨が降っているとの事。 異常気象という単語が当たり前になった昨今。 「例年並み」という正常気象がニュースになる日も、 そう遠くはないのかもしれません。 今年の夏はどんな夏になるのかなぁ……。 さて、そんなことを呟いていても仕方がないので、 月の移り変わりとともに、気持ちも切り替えていきましょう。 今日から7月。夏も目前。 目一杯夏らしい夏を想像しつつ、 夏の料理をテーマに書いてみたいと思います。 スタミナ抜群、元気モリモリ。 コリアうめーや!!第104号。 暑さをエネルギーに変える、スタートです。 |
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<夏を元気に過ごす豪快丸鶏料理!!> 五輪真弓、長渕剛、そしてX−JAPAN。 いきなりなんだというようなラインナップだが、 これすべて、何年か前まで韓国で有名だった日本人歌手だ。 今は日本文化の開放が進み、日本のCDも普通に買えるようになったが、 それまでは違法の海賊版以外に、日本の流行歌など微塵も見かけなかった。 そんな韓国でなぜか知名度があったのがこの3者。 音楽的には何の共通性もないが、 韓国で日本人歌手と言ったらこんな人たちだった。 僕が始めて韓国に行った1997年2月。 仲良くなった韓国の大学生とカラオケに行ったら、 知っている日本の歌は2曲しか入っていなかった。 五輪真弓の『恋人よ』と、長渕剛の『RUN』。 本当はもっとあったのかもしれないが、 韓国語の歌本の中から、彼らが見つけてくれたのはこれだけだった。 薄暗い地下のカラオケボックスで唯一の日本人として、 長渕剛の『RUN』を熱唱した記憶が生々しく残っている。 そういえばあのときもずいぶん酔っ払っていたなあ……。 「さあ、八田君。どんどん歌ってください」 「いやあ、でも日本の歌じゃないと歌えないので……」 「じゃあ、音楽なしで歌ってもいいです」 「え、アカペラですか?」 今思うとただの冗談だったのだろう。 韓国語も出来ず、韓国の歌もまったくわからず、 ひたすら聴き役に回っていた僕に気を使ってくれたのかもしれない。 だが、酔っ払っている僕に冗談は通じない。 友人の言葉を真に受けた僕は、 そのままマイクを握ってアカペラで歌い始めた。 「ちかごーろーわたしーたちはーーーいーーかんじーーーー」 当時、日本で流行っていたPuffyの『これが私の生きる道』。 いい気持ちで歌い始めたが、いかんせん誰も知らない異国の歌。 しかも歌っているのは、今日会ったばかりの得体の知れない外国人である。 ボックス内の雰囲気は途端に盛り下がり、皆の表情はいっせいに曇った。 「あ、やっちゃった……」 と、気付いたときにはすでに遅い。 韓国でカラオケに行って失敗したことは数多いが、 思えばあのときのPuffyがその第1歩だった気がする。 チェッカーズの『涙のリクエスト』をフリ付きで歌ってドン引き。 とんねるずの『ガラガラヘビがやってくる』を熱唱して全員無反応。 小泉今日子の『学園天国』で「Are you
ready?」を絶叫するも皆スルー。 ほかにもたくさんあったけれども後は全部忘れた。 韓国でのカラオケはとにかく痛い思い出が多い。 |
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韓国のCDショップ。日本コーナーが設けられ、日本人歌手のCDが売られている。 |
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えーと、なんでこんな話になったんだっけな。 カラオケから上手に料理の話に移行するつもりが、 思い切り脱線して、流れを完全に見失ってしまった。 何が言いたかったかというと、実はこんな話にもっていきたかった。 「外国にはかなり意外な自国文化が浸透している」 日本人歌手はたくさんいるのに、なぜ五輪真弓と長渕剛なのか。 それなりの理由があるのだろうが、日本人としては不思議でならない。 また同様の例で、モンゴル人と大滝詠一の話で盛り上がったこともある。 「ラヴ・ジェネレーション」がモンゴルでも放映されたらしく、 同時に主題歌の『幸せな結末』も大ヒットしたのだとか。 こういう話は本当に驚くしかない。 そして、それと同じ話が韓国料理にも言えるのだ。 韓国ではさほどメジャーでもない韓国料理が、 なぜか日本人の間ではよく知られているということがある。 その代表格と言えるのが、タッカンマリ。 金ダライのような鍋で、鶏を丸ごと煮込んだ料理。 丸鶏のほかにジャガイモや長ネギ、ニンニクなどが入る。 この料理は鶏を丸ごとというのが何よりも重要で、 タッカンマリという料理名も、直訳すると「鶏1羽」になる。 丸鶏をキッチンバサミでジャキジャキと豪快に切り、 醤油、酢、カラシ、唐辛子ペースト(タデギ)を混ぜたタレで食べる。 食べ終わったら、ダシの出たスープにウドンを投入。 鶏肉の旨みを最大限に楽しむ料理だ。 日本ではガイドブックや、旅行サイトでさかんに紹介されており、 特にリピーターの間では非常によく知られた料理である。 だが、この料理を韓国人が知らない。 最近になってやっといくらか知られてきたようだが、 数年前までは誰に聞いても、知らないのオンパレードだった。 というのもタッカンマリは、ある限られたエリア内での名物料理。 東大門市場にほど近い、鍾路5街という町だけで、 ひっそりと盛り上がった珍しい料理なのだ。 かつて東大門には高速バスターミナルがあり、 周辺は長距離移動をする人たちで賑わっていたという。 地方から帰ってきた人や、これから出かける人が、 慌しい中で空腹を満たしたのがタッカンマリだそうだ。 つまり、かなり特殊なソウルの郷土料理だということだ。 そのため、こんな質問を受けると非常に困る。 「地方でタッカンマリを食べたいのですが、美味しい店を教えてください」 最近は郷土料理の垣根がどんどん取っ払われているので、 もしかしたら地方にもあるかもしれないが、基本的にはありえない料理だ。 仕方ないのでソウルの地方料理であることを説明する。 「という訳で、残念ながら地方にはありません」 「そうですか。しょぼーん……」 タッカンマリが有名になりすぎたために起こる悲劇だ。 |
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タッカンマリ。丸鶏をハサミで切って食べ、ウドンでシメる。右下はタッカンマリの専門店が並ぶ鍾路5街の風景。裏路地の狭いところに店が密集している。 |
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なので、最近はよく似た別の料理をすすめることにしている。 タッカンマリよりも歴史が古く、全国的に食べられていて、 調理法も味も似通っているけれども、知名度だけ極端に低い料理。 こういう料理があるから食文化は面白い。 その料理はペクスク(韓国語での発音ならペクスッが近い)。 漢字では「白熟」と書き、元々は調理法をさす呼び名である。 肉や魚に味付けをせず、水煮することをペクスクと言うが、 鶏がいちばん有名なので、普通ペクスクと言うと丸鶏の水炊きをさす。 韓国の田舎に行くとこのペクスクを出す店が多く、 店の庭で飼っている地鶏を、適当につぶして売り物にしている。 朝鮮人参やナツメ、ニンニクなどの漢方食材をたっぷり入れて、 後はただじっくりと煮込むだけという手軽な料理だ。 タッカンマリとの大きな違いは皿に乗って出てくること。 タッカンマリは鍋で煮込みながら食べるが、 ペクスクは厨房で煮終えたものが出てくる。 皿に盛られた丸鶏の姿は、なんとも艶っぽくて美しい。 これを思い思いのところから解体してムシャムシャ食べるのだ。 ホロホロと柔らかくなった鶏を素手でむしりとり、 粗塩をちょっとつけて、ガブリとかじりつく。 タッカンマリは独自の辛いタレで食べる料理だが、 ペクスクは鶏そのものの味を楽しむために粗塩で食べる。 鶏の柔らかな味が口に広がり、肉のエキスがぴゅぴゅっとノドの奥に飛ぶ。 モモのむっちりした肉感を楽しみ、皮ぎしのトロトロした脂を味わう。 上手に解体していくと、ササミの部分もきちんと取り出すことができる。 細長くシュッと伸びたササミは、上品でさっぱりとした味だ。 ペクスクの楽しさは解体する楽しさでもあると思う。 普段スーパーで見かけるさまざまな部位。 それが1羽の鶏を解体する過程でよく見えてくる。 モモ肉、胸肉、手羽元、手羽先、ササミ。 マニアックな鶏好きなら、ぼんちり(尻先の肉)や、 せせり(首筋の肉)のうまさも知っていることだろう。 うまい部位にさりげなく手を伸ばす喜びがペクスクにはある。 タッカンマリは鍋料理だけに、この部位の選別が難しい。 皿に乗せられて、適度に冷めてゆくペクスクならではの喜びだ。 そして喜びのシメについても書いておこう。 タッカンマリはウドンでシメるが、ペクスクはお粥でシメる。 鶏をじっくりと煮込んだ茹で汁は最高のスープ。 鶏だけが皿に乗って出てくるが、スープが捨てられるわけではない。 この旨み濃厚スープで作ったお粥が、ワンテンポ後に運ばれてくるのだ。 この鶏粥が身悶えするほどうまい。 韓国のうまいお粥といえば、まずアワビ粥があるが、 アワビ粥が東の横綱なら、鶏粥こそが西の横綱だと僕は思う。 |
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いろいろなペクスク。右下は鶏を煮たスープで作った鶏粥。 左上の写真はクリックで拡大可 拡大 |
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タッカンマリはソウルでしか食べられないが、 ペクスクは韓国のどこに行っても食べることができる。 というより、田舎に行けば行くほど食べられる料理であろう。 また家庭料理として作られることも多い。 丸鶏料理は夏バテを防ぐスタミナ料理とされており、 日本でウナギを食べるように、鶏を食べる日というのも決まっている。 もっとも代表的な料理が、若鶏の腹にモチ米を詰めたサムゲタンだが、 家庭ではペクスクを作って食べるところも多いようだ。 真夏に鶏を食べる日のことを伏日(ポンナル)と呼び、 年に3回あるので、これを三伏(サムボク)と呼ぶこともある。 ちょうど日本で言う土用の丑の日みたいな日だ。 今年は7月15日、7月25日、8月14日が伏日。 毎年少しずつ変動するので、 カレンダーをしっかりチェックする必要がある。 この日は全国のサムゲタン店に行列が出来、 各地のスーパーで丸鶏が大売れする。 丸鶏をがっつり食べて、元気に夏を過ごすのが韓国式。 その時期にちょうど韓国に行くチャンスがあったら、 ぜひとも韓国の丸鶏料理を食べに行ってみて欲しい。 ソウルに行くならサムゲタンかタッカンマリを。 地方に行くなら地鶏のペクスクがオススメだ。 その時期には韓国に行けないなぁ、という人は家で作ってみてはどうか。 なにしろ丸鶏を茹でて、粗塩で食べるだけ。 この以上ないくらい簡単に、韓国の味が楽しめる。 |
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サムゲタン(左)と烏骨鶏を使ったオゴルゲタン(右)。 |
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<おまけ> サムゲタン、タッカンマリ、ペクスクの比較 料理名 :サムゲタン 鶏の種類:若鶏 料理形態:1人前ずつ鍋に入って出てくる 味付け :薄い塩味。好みで塩、コショウを加える 料理の後:特になし 値段 :8000〜12000ウォン エリア :全国 料理名 :タッカンマリ 鶏の種類:丸鶏 料理形態:金ダライのような鍋で出てくる(2〜3人前) 味付け :醤油、酢、カラシ、唐辛子ペーストを混ぜたタレで食べる 料理の後:カルグクスと呼ばれる韓国のウドン 値段 :13000ウォン前後 エリア :ソウルの鍾路5街 料理名 :ペクスク 鶏の種類:丸鶏(主に地鶏) 料理形態:皿に盛られて出てくる(2〜3人前) 味付け :粗塩、コショウ 料理の後:鶏を煮たスープで作ったお粥 値段 :2〜3万ウォン エリア :田舎に行くほど見かける |
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<お知らせ> ペクスクの写真がホームページで見られます。 よかったらのぞいてみてください。 |
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<八田氏の独り言> 名古屋コーチン、比内地鶏、薩摩軍鶏の、 日本三大地鶏ペクスクなんて食べてみたいですねぇ。 |
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コリアうめーや!!第104号 2005年7月1日 発行人 八田 靖史 hachimax@hotmail.com |
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