コリアうめーや!!メルマガバックナンバー

コリアうめーや!!第103号

 

 

<ごあいさつ>

6月15日になりました。

蒸し暑い日が続いておりますが、

関東甲信越地方まで梅雨入りしたようです。

日本全国が梅雨入りするまでもう少し。

うっとうしい雨とのお付き合いが始まります。

日々、傘を持ち歩くのも面倒だし、

天気予報とのにらめっこも億劫です。

夏生まれ、夏男の僕としては、

汗ダラダラでも夏のほうが幸せ。

ああ、夏よはやくやって来い!

と、恨めしげに呟く今日この頃です。

さて、今号のコリアうめーや!!ですが、

ちょっと変わったテーマにチャレンジします。

舞台を韓国から日本に移し、日本の韓国料理を語る企画。

コリアうめーや!!第103号。

時代をぶった斬る、スタートです。

 

<東京にて豚焼肉戦争勃発!!>

韓国焼肉は牛よりも豚のほうがうまい。

 

これは多くの韓国ファンが言い続けてきた事実である。

最近でこそ韓国の常識として日本でも受け入れられつつあるが、

しばらく前までは、疑いの目でしか見られなかった。

 

韓国といえば焼肉。焼肉といえば牛肉。

 

チマチョゴリを着たお姉さんがハサミを手に、

カルビをジョキジョキ切ってくれるのが韓国の焼肉だった。

 

従って、僕などが豚肉を褒めるとこういうことになる。

 

「韓国の焼肉は牛より豚のほうがうまいんだよ!」

「へー(明らかに疑いの目)」

 

「バラ肉を焼いたりカルビを焼いたり、種類も豊富なんだよね!」

「ふーん(興味なさそうな反応)」

 

「牛の焼肉より安いから、そのぶん量も食べられるしね」

「あー、なるほどねえ(このあたりでやっと納得の表情)」

 

「日本でも豚の焼肉が普通に食べられるといいなあ」

「そうね。お金のない学生なんかは喜ぶだろうね(満面の笑顔)」

 

と、このあたりで自分の失敗に気付く。

安さをアピールすると必ずこうなるのだ。

友人の冷めた表情から笑顔への変化は、

次のような過程を踏んでいると想像される。

 

「豚肉がうまいって力説されてもねえ」

「そっか、八田くんはお金がないから豚肉を褒めているんだ」

「ま、豚肉は豚肉なりに美味しいから、八田くんが喜ぶならそれでもいいか」

「んー、よしよし。豚肉は美味しいよねぇ。あっはっは」

 

むきー! お金があったって豚焼肉を食べるわい!(ないけど)

 

怒りにまみれてさらなる説明を試みるが、

ここまでくると何を言っても負け犬の遠吠え。

最後は涙をぬぐいながら諦めるしかない。キャインキャイン。

 

豚焼肉の魅力を知る韓国ファンであれば、

多かれ少なかれ、みな経験していることではないだろうか。

 

だが、ここ最近になって状況がだいぶかわった。

 

サッカーW杯、韓国ドラマ・映画ブームを経て、

韓国の情報はあふれ、豚焼肉の存在もだいぶ認知されるようになってきた。

韓国ドラマを見ていても、豚焼肉が要所要所で登場する。

 

例えば、『冬のソナタ』の第6話。

 

会食シーンとして豚焼肉が登場している。

豚焼肉としてはもっとも一般的なサムギョプサル(豚バラ肉の焼肉)を、

ヨン様や、ジウ姫がパクパクと食べているのだ。

 

こうした映像を通しての情報は説得力がある。

 

僕が熱を込めて100回話すよりも、

テレビが1回放映するほうがはるかに影響力があるらしい。

 

八田発言「韓国焼肉は牛よりも豚のほうがうまい」 → ふーん

テレビ 「韓国焼肉は牛よりも豚のほうがうまい」 → なるほど!

 

この事実がなんともせつなく悲しい。

 

ともかく韓国の豚焼肉は日本でもだいぶ知られるようになってきた。

そして、その動きを敏感に察知したのが日本のコリアンタウンである。

僕がよく行く東京の新大久保でも、ここ最近、豚焼肉を出す店がどっと増えた。

 

いや、増えたどころの騒ぎではない。

 

あちらにも、こちらにも豚焼肉専門店ができ、

生き馬の目を抜くような戦いが始まってしまった。

それぞれが工夫を凝らし、生き残りをかける豚焼肉大戦争。

 

今の新大久保は豚焼肉に燃えている。

 

  

  

今の新大久保は豚だらけ。

 

さて、東京での豚焼肉ブームを語っていく前に、

その前提となる韓国での話を少しだけしておこう。

 

韓国で一足先に豚焼肉ブームが起こったのは2001年。

 

サムギョプサルという豚バラ肉を焼くだけの簡素な料理が、

突如、流行の先端を行くオシャレな料理へと変身した。

 

豚バラ肉をワインに漬け込んだワインサムギョプサル。

バジル、オレガノ、パプリカなどで下味をつけたハーブサムギョプサル。

緑茶パウダーをまぶした緑茶サムギョプサル。

 

さまざまな付加価値をつけたサムギョプサルが登場。

それと同時に店舗の雰囲気も一新された。

 

ドラムカンに練炭というレトロなスタイルから、

フランス料理でも出てくるのかというキレイな内観に。

これに若者が飛びついて、オシャレ系豚焼肉は全国に拡大した。

 

この流れは現在に至るまで続いており、

さまざまな創意工夫を凝らした豚焼肉がどんどん登場している。

 

豚バラ肉を焼いたサムギョプサルだけでなく、

首肉、ハラミをはじめとした希少部位の焼肉も増えてきた。

骨まわりの肉や、皮だけを専門に出すような店もある。

皮からバラ肉までを大きく分厚く切り分けたオギョプサルも人気だ。

 

こうした韓国内での流れが、日本にも伝わってきている。

ここ1年で日本の豚焼肉事情は大きく変化した。

 

  

韓国で食べられる豚焼肉は分厚く大きい。左からワインサムギョプサル、石板オギョプサル、黒豚オギョプサル。

 

新大久保に新しい豚焼肉ブームが起こったのは昨年末。

 

それまでもサムギョプサルや、豚カルビを出す店は多かったが、

新大久保でも老舗格の、オムニ食堂が革命がもたらした。

 

新メニュー「3秒炭窯焼きサムギョプサル」。

 

スコップの上に豚バラ肉を乗せ、巨大な釜で焼くという派手な料理で、

3秒という短時間で高熱を加え、外側をカリッと焼いて肉汁を閉じ込める。

その後、もう1度火にかけてじっくり火を通すというのが売りだ。

 

豚肉の旨みを最大限味わうために、開発された工夫の技。

 

スコップで焼くというインパクトも含め、

従来の豚焼肉料理とは一線を画すメニューとなった。

 

ほぼ同時期にライバル店ができたのもよかった。

 

2004年12月に鐘路本家(チョンノポンガ)が開店。

メインメニューはオムニ食堂と同じスコップで焼くサムギョプサルだ。

 

鐘路本家はオムニ食堂よりも目立つ場所に店を構えた上、

カフェにも似たオシャレな雰囲気で短期間のうちに人気を獲得。

目立つ豚のオブジェも話題を呼び、一躍有名店へとのし上がった。

 

これら2店の影響で、スコップで焼くサムギョプサルは、

新大久保での定番の一品として認められるようになった。

 

 

 

(上)オムニ食堂が掲げた3秒サムギョプサルの看板。

(下)鐘路本家のオブジェとスコップサムギョプサル(3秒サムギョプサル)。

 

また、それだけが新しいサムギョプサルではない。

鐘路本家と同じく、2004年12月に開店した豚さま(とんさま)は、

重さが30キロもあるすずり(硯)で豚肉を焼くのが自慢。

 

なぜすずり? と思う人もいるだろう。

 

だが、このすずりこそが最高の調理器具なのだ。

店の人は遠赤外線効果や、保温効果を強調するが、

それよりもはるかにわかりやすいのが形状のメリットである。

 

すずりには墨汁をためる部分があり、

全体的になだらかな傾斜を描いている。

平面部分に豚バラ肉を置いて焼くと徐々に脂が流れ出し、

傾斜を伝って墨汁部分にたまっていくのだ。

 

実はスコップを使ったサムギョプサルにも同じ効果があり、

傾斜によってバラ肉の余計な脂を落とすことができる。

 

そしてもう1点。

 

この落ちた脂を利用して、白菜キムチを焼くことができる。

 

日本の食卓でも馴染みが出てきた、豚キムチ炒めを思い出して欲しい。

豚肉の脂と、白菜キムチは出会いものといってもいいくらいの美味。

 

火が通ってとろりとした白菜キムチに、

豚肉の脂が付け加わって、たまらないうまさになる。

そのまま食べるもよし。よく焼けた豚肉と一緒に食べるもよし。

サンチュなどの葉野菜に包み、ガブリと頬張るもよし。

 

焼いた白菜キムチの味は、肉そのものの魅力にも劣らない。

ごはんにちょこっと乗せて、一緒に食べてもおいしい。

 

この豚バラ肉と白菜キムチの組み合わせも韓国で流行したもの。

 

現在の新大久保ではこの形式が主流となっている。

僕自身はネットで確認しただけだが、日本の他地域の韓国料理店でも、

こうした形式のサムギョプサルが徐々に広まっているようだ。

 

ひとつ流行すると、徹底的に乗っかるのが韓国人のやり方。

完全に飽きられるまではこの形式が拡大すると思われる。

 

 

豚さまのすずりサムギョプサル。

 

また、こうした同形式のサムギョプサルを出す店が増えたために、

さらなる個性を出そうとして頑張る店も出始めてきた。

 

歌舞伎町に今年オープンしたトントンテジは、

カンナで削ったように薄いサムギョプサルを売りにしている。

食感の柔らかさを重視した、新しいタイプのサムギョプサルだ。

 

かと思えば、焼き方ではなく豚肉の質そのものにこだわる店もある。

 

豚菜(とんさい)は、鹿児島、茨城県産の黒豚を使用。

同じく、今年新規オープンした、てじまうるは山形県のブランド豚、

平牧三元豚、平牧桃園豚の使用をアピールしている。

 

一面、豚焼肉だらけになってしまった新大久保では、

その店だけの個性を打ち出さないと、やっていけない状況。

どの店が高い評価を受け、生き残っていくのか大変興味深い。

 

 

トントンテジのカンナサムギョプサル。薄切りの食感が新しい。

 

ただ、ひとつだけこの状況に物申すのであれば、

韓国国内と比べると、まだまだ質的に物足りない点であろうか。

 

韓国ではもっと安い値段で、ボリュームのある豚肉が食べられる。

 

日本で豚焼肉を食べていて、もっとも不満が残るのが豚肉の厚さだ。

薄っぺらい豚肉を焼いていては、どんな工夫をしても肉汁は抜けていく。

韓国のように分厚いトンカツ並みの肉を出す店は現れないものか。

塊のような肉が、ゴロゴロ出てくるような店に出てきて欲しい。

 

個人的には、そろそろ日本企業の出番ではないかと思っている。

 

ブランド豚や、ボリュームのある肉を安価で提供するには、

流通を抑えられて、資金力のある日本企業のほうが強いだろう。

飲食業の大手あたりが、豚焼肉メインの店を始めたら面白い気がする。

 

あえて名指しで期待したいのは牛角。

 

あれだけ増えた店舗のひとつくらいを、

さりげなく「豚角」にしてみるのはどうだろう。

 

分厚く切ったブランド豚を韓国式に調理。

 

今の時代なら、きっと受けると思うんだけどな。

 

<おまけ>

一口に豚焼肉といっても色々な種類があります。ここでは豚バラ肉を焼くサムギョプサルを中心に紹介しましたが、ほかにもモクサル(首肉)、テジカルビ(豚のカルビ)、カルメギサル(ハラミ)、コプテギ(皮)、ティッコギ(骨まわりの端肉)、ハンジョンサル(首筋の肉)など、かなりの部位の焼肉が存在します。それぞれに魅力があり、また焼き方によってもまったく味がかわってきます。日本国内で豚焼肉が食べやすくなったとはいえ、韓国で食べられている豚焼肉の現状にはまだまだ程遠いもの。やっと認知されてきた豚焼肉が、今後日本でもさらに発展していくことを心から願っています。

 

<お知らせ>

豚焼肉の写真がホームページで見られます。

よかったらのぞいてみてください。

http://www.koparis.com/~hatta/

 

<八田氏の独り言>

TVに登場するような超高級ブランド豚を、

韓国式の豚焼肉で食べたらうまいでしょうねえ……。

 

コリアうめーや!!第103号

2005年6月15日

発行人 八田 靖史

hachimax@hotmail.com

 

 

 

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